アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

日本の美を極める。近代絵画が彩る四季・花鳥・風情。2014.8.8~8.31。ホテルオークラ東京 別館地下2F。

日本の美を極める。近代絵画が彩る四季・花鳥・風情。2014.8.8~8.31。ホテルオークラ東京 別館地下2F。

2014年8月30日。

 顔見知りに券をいただいた。ありがたかったけど、日本画にはあまり興味がないし、とも思ったが普段は行かないところだから、と思い直して妻と出かける。

 

 立派な場所。ホテルの地下。着物を着た豊かそうな方々も多い。香水のかおり。日本画というのが、エネルギーを殺しているのを見ると、すべてが止まっているようで、どうしてこれが必要とされたのかはちょっと分からないが、思い出すのが、バブルの頃の話でもあったりする。

 

 社長室に飾る絵は、高いのがいい。横山大観とか、東山魁夷とか、平山郁夫とか、そういう分かりやすい絵がいい。それまで絵や美術に関心があったわけでもないけど、恥ずかしくない絵が欲しい。そして、見て分かりやすいのがいい。といった需要に応えるという意味では、ほぼ完璧なのかもしれないが、今、まとめて見ると、伝わって来ないと思えるのは、自分のせいもあるかもしれない。

 

 これを貫くような、それも違う視点で見られるような、そんな視点が同時にあったら違うのかもしれないが、私には、観光地の絵ハガキにしか見えない。退屈になってしまったが、不思議な気持ちになった。最後に小倉遊亀の作品があって、それは上品な婦人という注釈がしてあって、確かに外見上はそうなのだけど目に意地悪があるのをはっきりと描いてあって、いいのだろうか、と思ったが、それは本当にうまいのかもしれず、ただ、こういう不穏さがあるものが最後だというのは、何か意味があるのだろうか、などと思った。

 

 

 

(2014年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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宇川直宏 DOMMUNE UNIVERSITY OF THE ARTS
「THE 100 JAPANESE CONTEMPORARY ARTISTS / season 4」。【参加アーティスト】岡本太郎、小清水漸、高谷史郎、奈良美智、山口晃 2016.5.28〜6.18。山本現代。

2016年6月4日。

 何をやっているか、ホームページで見たあともわからなかった。宇川の立体作品があるのでは、と思ってエレベーターを降りたら人がしゃべる声が響いていた。いくつかのモニター、その前にあるヘッドフォン。アーティストがしゃべっている姿があって、その話している内容が聞こえる。宇川が、インターネットを使った放送のようなもので、アーティストが話をする、という「番組」をやっているらしく、その成果を展覧会として開いているんだ、としばらくしてわかる。

 

 声が聞こえていたのは、奈良美智が、箭内と話している声だった。その話をしている内容に少しずつ引き込まれ、AtoZの時は、自分が行き詰まっている時で、個人に戻らないと、という気持ちだった、といったことを話をしたりもしていて、そして、その時に集団で作品を作っている時に、飲んでいる時にも、作品の話をしないことに違和感があった、といった内容で、そして、ポーズではなく本当にいつも真剣に取り組んでいるのがわかって、それは、どこかエリを正すような気持ちにもなった。

 

 

 

宇川直宏」(山本現代

http://www.yamamotogendai.org/japanese/previous-exhibitions/2016-ukawa

 

 

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梅沢和木 個展「画像の紙々」。2016.8.26~9.7。カオスラウンジ五反田アトリエ。

2016年9月3日。

 五反田の、どこか分からなくなるような不安な場所に、ひっそりとあった。

 

 中は、いつもの、というほど見ていないが、こういう絶妙な選び方と並べ方が作品として、いつも強度があるような気がして、それは、選ぶことが作品になる、と宣言したディシャンの子ども、という感じがする。

 

 鮮やかさと、今の時代が残っていくような印象。この作家のフォロワーって、いっぱいいそうだけど、よく分からない。作家本人がいた。静かな情熱はありそうだけど、いつも澄んでいる印象がある。アトリエを出て、五反田へ戻る時にすれ違ったのは、たぶん藤代嘘だったと思う。

 

 

 

梅沢和木 個展「画像の紙々」)

http://chaosxlounge.com/wp/archives/1850

 

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「ムットーニ コレクション」。2019.4~2020.3。世田谷文学館。

「ムットーニ コレクション」。2019.4~2020.3。世田谷文学館

 

2019年8月19日。

 

 テレビで初めて見た時は、カラクリという感じだった。

 だけど、実際に見ると、その完成度のようなものが、やっぱりすごいと思える。

 

 

「ここに散りばめられた物語。

 それらは次々と光を投げ掛け、いくつもの時間を折り重ねる。

 それは一瞬世界を照らし、またすぐに静寂の闇を呼び戻す。

 でもその刹那的な瞬きは、永遠を夢みているのかもしれない。

 ここは京楽と静寂が入り交じる物語の楽園。

 ようこそ、MUTTONI PARADISEへ。

                     ―― ムットーニ」。(リーフレットより)

 

 

 

 

 『自動からくり人形作家「ムットーニ」こと武藤政彦。人形と装置の多様な動きに合わせ、音楽、光、本人の語りなどが重なり合いながら、物語や世界観が表現されるその作品は、他に類のないアート作品として多くの人びとを魅了しています。当館ではムットーニ作品7台を所蔵しており、開館以来特色あるコレクションのひとつとなってきました。2018年春、新たな3台が加わったのを機に、随時上映作品を入れ替えながら、その魅力をお伝えしてまいります』         世田谷文学館  (リーフレットより)。

 

 

 

 

 

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仁木悦子の肖像。2019.4.20~9.23。世田谷文学館 1F展示室。

仁木悦子の肖像。2019.4.20~9.23。世田谷文学館 1F展示室。

 

2019年8月29日。

 文学者の展覧会は、不思議といえば不思議に見える。

 手書きの原稿が展示され、初版本なども並ぶ。

 本当は、その作品を読むのが、たぶんもっとも正当的な「鑑賞」のはずだけど、ただ、今は「手書きの原稿」自体がなくなりつつあるから、今後のこうした展覧会は、どうなるのだろう、などと思う。

 

 

「1928年東京生まれ、本名は大井三重子。4歳で胸椎カリエスを患い寝たきりになる。独学で学び、童話作家として活動を始めた数年後、推理小説を執筆するようになる。57年、初めての長編『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。以後、推理小説ペンネームの仁木悦子名義で発表した。58年から約2年間にわたる複数回の手術とリハビリを経て、車椅子での生活が可能になる。退院後は夫とともに世田谷・砧の家に暮らした」。(リーフレットより)。

 

 

 

www.setabun.or.jp

 

 

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アニメ「ピンポン」展。2014.5.23~6.8。タワーレコード渋谷店8F。

アニメ「ピンポン」展。2014.5.23~6.8。
タワーレコード渋谷店8F。

2014年5月30日。

 先週、渋谷に「かないくん」展を見に行った。そのあと、アニメのピンポンを見て、インターネットのホームページを見て、いつのまにかピンポン展というものを渋谷でやっているのを知った。松本大洋なのだから、たとえば「かないくん」の会場で、この告知をしてくれればいいのに、などとも思い、その中で限定品のTシャツがあるのを知って、欲しいと思って、妻にその映像を見せたら「欲しい」という事だったので、用事があるので出かける前に渋谷に行って、ということにしようと思ったのは、妻が会場に電話をかけて、まだTシャツありますか?ということを聞いたら、XLは売り切れですが、他は少しずつあります、という返事をもらったので、行くことにした。

 

 渋谷のタワーレコードは行ったことがなかった。

 エスカレーターを上って、8階まで行く。こじんまりとした会場。アニメの曲が流れている。それは聞こえてくる。ペコやスマイルを相手にするゲームのような卓球台があるとか、アニメの原画がある、というような情報だけは知っていたが、若い男女が2〜3人いて、だけど、静かで淡々としている空間になっている。

 

 入ったら、壁にアニメの原画がある。第5話くらいまでのいろいろな場面。卓球をしている人間の動き。表情。うまい。線がやっぱり違う。そんな事を思って、シミュレーションの卓球が見えているけど、若い男性二人が取り組んでいるのが見えて、手を出しにくい。

 

 他にもオープニングのアニメが鉛筆だけで描かれているらしいことを知り、それを見て、おおと思った。やっぱり絵のうまさというのは、うまいスポーツプレーヤーと似ていると感じたのは、体の動きという事が共通しているのかもしれない。卓球のリアルさを出すために、スタッフにも配っているらしい資料が、ちゃんとしていて、さらには、登場人物のそれぞれの卓球のラケットまで実際に作られていて、そういう見えにくい部分のことまで考えて、用意されていて、だからあれだけのアニメができているんだ、というような事を思った。

 

 そうしているうちに、シミュレーションの卓球台があいて、そしてペコを相手に「WIN」という文字が出て来て、え?と思うくらいあっけないものでもあった。

 

 壁に映されたのはオープニングやエンディングのアニメが流れている。大きい画面。広がる音楽。スタッフなどの名前がないバージョンも流れていて、何度か見てしまっていて、そして、気持ちがよかった。

 

 こういう作品を見られるのは、ちょっと幸せな感じまでした。

 Tシャツは買った。迷ってSサイズ。妻に買うためにXSを聞いたら、それ以上、小さいサイズはありません、と言われた。ちょっと残念でもあった。何度か見て、少しゆっくりして、この世界の感じが、江ノ島の近辺の事を少しは分かっているので、よけいに近くに勝手に感じているのかもしれない。

 まだアニメは続いている。

 楽しみだった。

 買い損なったスイッチを買ってしまった。

 そこにあったビームスのTシャツを、また買いたくなった。約5000円だけど、あったら買ってしまうかもしれない。

 このタワーレコードのビルの中にはカフェもあって、もう少しお金があって、あまりためらくなくCDを買えるような立場だったら、もっと楽しい場所かもしれない。

 

 

(2014年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

tower.jp

 

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永岡大輔 展 『柔らかい境界場』。2012.8.5~26。Hasu no hana。

永岡大輔 展 『柔らかい境界場』。2012.8.5~26。Hasu no hana。

 ギャラリーで、絵画だけではなく、映像も流れている。それでいて、静かな時間だった。

 

「繊細さと静寂さを持ち合わせる線画で、詩情溢れる世界観を紡ぎ出す

 永岡さんは、近年活動の幅を広げ様々な手法の映像作品で

 新たな魅力を増しています」(DMより)。

 

 

 

 

www.hasunohana.net

 

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