アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」2019.9.21-11.17 森アーツセンター・ギャラリー

2019年11月15日。

 日本の実業家が作品を購入したのをきっかけにして、バスキア 展が開催されることが決まって、それは、やっぱりうれしかった。実業家が購入した作品は、個人的には、別の作品を買ってくれれば、とも思っていたが、それでも、これがスタートとしての企画だろうから、やっぱり、ありがたいことだった。開催まで、素直に楽しみだった。

 

 それなのに、結局、会期終了直前になってしまい、入場するまでに1時間くらいかかると聞いていたので、入場券を、コンビニで買えるような手続きをした。その途中で、自分のバカバカしいミスがあって、近所のコンビニではなく、結局は、渋谷の109に久しぶりに行くことになった。「チケットぴあ」は、円柱の2階の部分にあって、そこに行くには、一度外にでなくてはいけなかった。その外の部分が屋上で喫煙所みたいな場所になっていた。ただ、何しろ、おしゃれな建物と思っていたので、そこの、微妙な乱雑さが意外に感じた。

 

 そこから六本木に行き、美術館のある階段が見えたら、嘘みたいに人が並んでいた。チケットを買っていたから、ありがたいことに、その列を横に歩いて行けたのだけど、入場のためのチケットに換えるために、ちょっと並び、さらに、「上で30分くらい並びます」と言われた。エレベーターは一人だけだった。初めてだった。52階まであがる。降りてから、また、並ぶ。かなりの列の長さだった。本当に30分くらい待って、手荷物検査までして、やっと入れた。

 

 まだ見たことのないバスキア の作品がたくさんあって、バスキア 自身のノートまで見られた。

 本当に、人がたくさんいた。撮影可能な作品もけっこうあった。作品の前の、ここから入らないでください、というラインよりもさらに後方に、距離を保った場所に人が集まっていた。不思議な距離感だった。

 

 それは、おそらくはスマホで撮影して作品全体が、ちょうど入る場所で、その距離は、誰もがほぼ同じだったようだ。私はスマホも持っていないから、そのあたりの距離感は、きちんと理解できていないと思う。

 ただ、入らないでください、というラインから、撮影ラインの間に、スペースが空いているのは、見える。そこは、鑑賞するには、いいポジションで、そこが空いているから、そのスペースに入って、なるべくそばで見たかった。だけど、そこに立つと、後ろでスマホを構える人たちの圧力がありそうだから、なんだか勝手に遠慮して、人の波が去るまで待ったりもした。

 

 鑑賞している途中で、撮影が許可されていない作品を撮影してしまったらしい若い女性が、その映像の削除を指示されていたようで、それは他の場所ではあまり見られない場面で、ちょっと恐い光景だとも思ったのだけど、それだけ管理が徹底しているとも思った。

 

 実業家が購入した「無題」の作品は、個人的には、これから、という印象が強かった。だけど、現在の所有者は、だからこそ、そこに自分を重ねて、余計にいい作品と思ったのかもしれない。などと想像する。

 

 会場の、他の作品も見て周り、また戻って、見てを、しばらく繰り返し、それは、やはり贅沢な時間でもあったが、あくまで自分なりに思ったのは、バスキア のピークは1984年だったのはないか、ということだった。

 

「Onion Gum」,「Carbon/Oxygen」,「Plastic Sax」。

 

(注 「Onion Gum」は、会場のキャプションでは、1984年となっていたので、このグループに入れました。ホームページでは1983年になっているので、もしかしたら、1983年の作品かもしれません)。

 

 もちろん、その年の作品を全部みたわけではないし、バスキア の作品を全部知っているわけでもないから、素人判断に過ぎないけれど、少なくとも、この展覧会の作品群の中で、1984年のものは、すごくよかった。

 

 大きくて、様々なモチーフが描かれているのだけど、バラバラな感じはしなくて、集中力で大画面がすごくまとまっていて、色もきれいで、見ていて、気持ちがよかった。そこへ向かって、1982年(今回、高額で購入された作品もこの年の作品だった)、1983年とよくなっていって、ピークになる、という印象だった。

 

 そう感じたのは、展示の最後の方にあった『「無題」1986年』を見たせいも大きいと思う。

 1984年の作品群にも負けないくらい、大きさは十分だし、いろいろなモチーフや、文字もたくさん描かれている。だけど、全体がバラバラな印象になっていて、色も少なくて、その色数の少なさだけでなくて、色自体がきれいに見えなかった。だから、よけいに、その2年前の作品群が、よく見えてしまったのかもしれない。

 

 それに、アンディ・ウォーホルが共作したのも1984年で、ウォーホルが、いい時を見逃さないのではないか、といった思い込みも、1984年の作品が、良く見えてしまった理由かもしれない。

 

                  

                  (2019年のメモに多少の加筆・訂正をしました)

 

 

バスキア 展 メイド・イン・ジャパン」2019  ホームページ

https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/basquiat/