アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「コンセプチュアリズムの新たな展開」。1999.3.4~3.23。横浜市民ギャラリー。

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「コンセプチュアリズムの新たな展開」。1999.3.4~3.23。

横浜市民ギャラリー。

 

1999年3月17日。

 ここに来るのは2度目。失礼だけど、明らかに予算が足りなそうなチラシだった。それでも、少ない色数とそれほど質も高くない紙なのに、シャープでカッコよく見せているところに、すごく知恵を感じる。それに「コンセプチュアリズム」という言葉に引かれて、行った。デュシャンを知って以来、こういう言葉に惹かれるようになった。

 思ったよりも広い会場。7人の作家に、それぞれ大きいスペースが割り当てられている。

 

 ナカイメグミ。身の回りにあるものを使った小さなアクリルに入った虫の死体。雑誌の人生相談への勝手な解答。決して明るい動機で作られたとは思えないのに、しかし何か前へ進む感覚が伝わってくる。

 スズキヒロシ。黄色いプラスチックの板がドアの下に意味ありげにあり、その部屋には「1回に一人ずつ、入ってください」と書いてある。その中へ、一人で入る。何もないガランとした会議室みたいな広さ。すみに少し開けたドアがあり、そこにただ蛍光灯で照らされた黄色い小さなスペースがあるだけだった。あとは何もない。何かあるんじゃないか。と構えた心に足払いをされた感じで、嬉しかった。

 この2人の作品が、特に印象に残った。

 

 3月22日に、シンポジウムがあった。一人で行った。ゲストキュレーター市原研太郎。エンターテイメントに走ればいいというものでもなく⋯⋯といった発言があった。全体では、自分にとっては理解が及ばない話も多かった。「コンセプチャリズムの「新たな展開」の新しさについては、分からないままだった。3時間に及んだシンポジウムの最後、質問が他にないのを見てから、気になった2人、スズキとナカイに聞いた。

 そうしたら、作品制作の動機は、まず自分がこうしたい。を優先させているのが分った。今の自分にとっては、そういうことを確認できたのは、プラスだった。ナカイのやり方をネガポジなどと表現するのも知った。

 

 ここのところ、ずっと頭がぼんやりしていた。

 まだ、先もまったく見えなかった。母親の症状がどうなるのか分からなくて、何しろ、実家にいて、様子を見ていくしかなかった。

 このシンポジウムが終って、また同じ横浜市内の実家に帰った。

 

(1999年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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