アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「MOTアニュアル2007  等身大の約束」。2007.1.20~4.1。東京都現代美術館。

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MOTアニュアル 等身大の約束」。2007.1.20~4.1。東京都現代美術館

 

2007年3月28日。

 このシリーズは、9回目だと書いてあった。

 1999年の第1回から、全部、見ている。好きな企画。

 たぶん、予算のことを考え、国内の作家で展覧会を、という目的も確実にあったと思うが、でも、それが逆にいい結果を生んでいるようにも思える。

 

 千葉奈穂子。

 セピア色。田舎の風景。なんだか、介護にしばられたと感じる気持ちを思い出し、重くなる。でも、田舎の電話ボックスとかコンビニとか、そういう風景は面白いと思う。

 

 秋山さやか。

 自分の移動を刺繍する作品。最初に「美術手帖」か何かで、自分の住んでいるワンルームか何かの部屋の中で、自分が1日歩いている軌跡を刺繍しているのを見た時に、すごく面白いと思った。それが、もっと大規模になったり、どこかの街に住んで、その記録として同じ作業(といっても糸だけではなく、ボタンとか、何だかきれいそうなもの)をしているが、でも、個人的には最初のワンルームの方が、コンセプトが強くて、しかも、他に何もできないけれど、自分の生活そのものを作品にするしかない感じが、面白いと思う気持ちは変わらなかった。ただ、どこかの国で製作したらしいものは、和紙のような粗い感じですいたものに、いろんな糸などで刺繍しているのは、それはシンプルに物体としてきれいだった。そして、私のように最初のワンルームがいい、というのは観客としては勝手なことで、作者はそこにずっといるわけにもいかないし、と思いながら、でも、そういう切実さを、やっぱりキープしていてほしい、とさらに勝手な感想も思ったままだった。

 

 中山ダイスケ

 ある意味、ファンになっているだと思う。

 講演も聞いたし、作品も全部ではないにしろ、けっこう見てきた、と思う。どこかイタイ感じの作品は好きだった。

 今回は、そういう痛い感じは、ほとんどないように見えた。

 それより、うまさみたいなものを感じた。絵が、こなれている。立体も洗練されている。

 

 加藤泉

 一緒に見にいった妻が、今回では、一番印象に残ったという作家。

私はガレリアキマイラで見てから、ずっと気になっていたし、好きな作家。

今回も、特に立体がよくて、絵画は、相変わらずな気持ちにもなっているが、でも、いい意味で変わらない、ということかもしれない。気持ちのいい不気味さが、ずっとある。

 

 しばたゆり。

 自分の身の回りのものに、湿った執着心を感じさせる作品が並んで、私にとってはとても印象深かった。

 美術館のほこりをまぶして、擦った作品。

 試験管に、いろいろなものを、擦って集めている作品。最後の方に両親の骨をそれぞれ擦っていて、「自分は何も生み出さず、白い物質を残すことでしょう」みたいな文章がやっぱり印象に残った。今回、この人はまったく知らなかったが、知ってよかった、と思った。

 

 コーヒーを飲んで、妻といろいろと話をして、それから常設展も見た。

 宮島達男の作品。赤い数字が変わり続けて、大きい四角の中で、それがずっと続いている。きれいだと思った。

 いつも、ここにあって、だんだん、好きになるような気がする。

 

 

(2007年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

www.mot-art-museum.jp