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1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

第21回「岡本太郎現代美術賞展」。2018.2.16~4.15。川崎市岡本太郎美術館。

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第21回「岡本太郎現代美術賞展」。2018.2.16~4.15。

川崎市岡本太郎美術館

 

2018年4月12日。

 この展覧会の招待券を手に入れたので、行きたいと思っていて、それも、大賞と、次点(敏子賞)の2人の作家が、去年も個展を見て、印象に残っていた。それに、この展覧会は毎年、見に行きたいものの一つだから、行かなくちゃと思いながらも、時間はたち、2カ月くらいはやっているのに、あと1週間を切ったあたりで、やっと行けることになったが、美術館の場所がやや遠いために、なんだか焦った気持ちで出かけることが多い。

 

 電車の時刻を確認し、帰りは義母がデイサービスから帰ってくるので、午後3時頃には美術館を出ないといけないし、などと思いながらも、美術館に来て、入り口は赤くて、パビリオン感があって、そういえば、太陽の塔は、今は中に入れるようになったんだ、と思ったりもしていて、常設展で絵画を見て、「予感」がいいと思ったり、「明日の神話」の原画もいいな、と思って、渋谷駅で見られるのは有り難いと改めて思ったりもして、そして、そこから、今回は岡本太郎現代美術賞展がメインだから、と思いながらも、入り口では充実したパンフレットがあって、ありがたかった。

 

 あ、あの鐘だ。福島のカオスラウンジ「市街劇」のときに見た、アルミ缶を集めて溶かして固めた鐘で、それはお寺の復興というテーマと共にあって、だから、鳴らしてくて、何となく遠慮したままだったから、ここで、鐘をつけるのもうれしかった。妻が最初についた。いい音だった。私は、もう少し柔らかめについた。ちょっと違う感触の、でもいい音が出た。こんなに機能に優れていたんだ、とも思った。特別賞をとった市川ヂュンの作品。

 

 弓指寛治。「Oの慰霊」。アイドルの岡田有希子が自殺をしてしまって、そのことをテーマとした作品だが、それを絵画にしている。それは、以前見た作品と同じテーマなのだけれど、明らかに、もっと力が増しているのは分かった。さらに周囲は絵馬のようなものが本当に所狭しと並べられているのだけど、それは2万を超える去年の日本の自殺者の数で、それも含めて、本気で「慰霊」をしようとしている。それは、作家本人の母親が自殺したことが中心的なテーマになっていると思われるのだけど、そこは変わらずに、そこから広がる力みたいなものが内からわき上がるような、重いのに、見せてくれるものになっていると思えた。なんだか、本当にすごかった。「認知度は低いが1人の死に対して平均5人の近親者がその後遺症に生涯苦しんでいる。」という文章も作者のコメントの中にあった。岡本敏子賞を受賞している。

 

 さいあくななちゃんは、これまで見たものと、本当に変わらない印象もあったが、これだけ大きいスペースをきちんとうめつくして、その密度があって、圧もある、というのは、すごく、そのコメントも、「作ることに理由とかコンセプトとかどうでもいいです」といった言葉から始まっていて、本当に大竹伸朗みたいだとも思って、そして、ブースの中に、これだけの作品があるのに、一体感があるのは、作者の意志がすみずみまで浸透しているせいかもしれない、と思ったりもした。岡本太郎賞を受賞していた。

 

 この2人が賞をとったというのは、すごく意味があるように思えた。偉そうな言い方で、申し訳ないけれど、この2人に賞を与えられるこの岡本太郎現代芸術賞は、やはりすごいのかもしれないとも思えた。

 

 まったく知らないまま見たのが「ワタリドリ計画」の作品で、映像でクイズみたいなものが流れ続けていて、2人の女性がそれに答え続けて、といった音が会場に響いていて、最初はちょっと敬遠したいような気持ちだったのだけど、ちょっと丁寧に見たら、2人の女性は美大生の時から、一緒に旅をして、各地で展覧会を開いて、というプロジェクトを始めて、そこかから10年がたった、ということを作品にしていた。その間に、1人は結婚して出産したり、といったことがあったりとか、いろいろなことが起こっていて、それはもしかしたらアーティストとしての才能は平凡かもしれないけど、2人でどちらかが死ぬまでこのプロジェクトを続ける、と決めている、という宣言もあって、年数がたつほど、作品の意味や価値が上がっていくように感じた。今でも、この作品は見れば見るほど、味わい深いものがあった。

 

 他の作品も、本当に力作だった。

 

 

(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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