アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「内藤礼 信の感情」。2014.11.22~12.25。東京都庭園美術館。

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内藤礼 信の感情」。2014.11.22~12.25。

東京都庭園美術館

 

2014年12月25日。

 庭園美術館はリニューアルをして、その久しぶりの展覧会が、その建物を見せる、ということと両立するような内藤礼の展覧会であって、なんだかとても期待していた。最終日でクリスマス。目黒で久しぶりにちゃんとした昼食。妻と一緒にゆっくりと食べて、そして美術館に向かう。リニューアルした、といっても、入り口から入って、そして、あちこちが新しく修復されている、という事だったが、その違いが、よく分からなかった。それよりも、入って最初の頃に内藤礼の作品を見つけ、それが小さい人形であって、鏡を向いている、ということを知って、なんだかうれしくなり、探そうという気持ちになったら、余計にリニューアルされた場所の事が分からなくなっていった。平日だから、撮影は出来て、だから、どの場所でもカメラやケイタイを構えている人ばかりだった。最終日のせいか、平日だというのに人が多い。

 

 係員に、内藤礼の作品の事を聞いたら、表示もないのは、本人の意向で、新館へ行くと、パンフレットがあって、もう一度宝探しみたいに探して欲しい、という事なんですが、と親切なスタッフの人が教えてくれて、そして、イスの下にある箱からリーフレットをくれた。1階には2つ。2階には8つあります。あとは、庭にペリカンの像があるのですが、その帽子です、とちょっとうれしそうに教えてくれた。

 

 歩くたびに、その「ひと」がいるかどうか気になる。鏡を通してしか顔を見られない「ひと」もいる。鏡のあるところには、たとえ前に置ける場所がなくても鏡に直接何か台のようなものをはりつけて、そこに置かれて鏡を見ている。2階には8体だから、けっこうある。小さいから気がつかない人もいるかもしれない、というような大きさでもあって、そして、1体は、部屋の床の上に置かれていて、それも真ん中に近い場所で、微妙に暗くて、距離も遠くて、顔が見えない。てっきり外を見ていると思った。つまり、こちらには向いていないのでは、と思った。スタッフに聞いて、こちらを向いている、ということだったが、勝手に少し疑っていた。それは、庭のペリカンに帽子をかぶっていて、そのペリカンと視線を合わせるような人が立っていて、それも帽子をかぶっていて、その人だけが外を向いていたから、というような理由もある。

 

 新館に行ったら、立派なギャラリーが出来ていた。白い壁に微妙な色がついたと思われる白い絵が並んでいる。ちょっとめまいがする感じ。そして、「ひと」が一体だけ、床にこちらを向いて立っている。そのうしろにある鏡が扉のような箱。中には、糸が入っているらしい、とスタッフの人に教えてもらった。

 楽しい時間だった。

 あちこちがよかった。いろいろな事を思った。

 ショップのTシャツを見て、妻は一目で気に入って、買った。珍しいことだった。 

 

 もう一度見に回ったら、一つ見落としていた作品があった。小さい鏡と共にある「ひと」だった。そして、部屋の真ん中で、どちらを見ているか、はっきりと分からない「ひと」が、こちらを向いているのが分かったのは、それをアップで撮影している人が、その写真を見せてくれたからだった。その人は内藤礼のファン、でありコレクターだった。今回の「ひと」を、すでに所有していると言っていた。豊島には行っているし、この展覧会にも、6回来ているといい、鎌倉の展覧会にも行っていると言い、短い時間だけど、こんな人がいるんだ、と少しうれしくなった。内藤礼は、作品を置く場所を決める時に、1週間くらいは、この場所を回って、そして決めたという事も教えてくれた。いろいろなことを伝えてくれたし、すごくありがたかった。

 とても楽しい日になった。

 シャープに作られた図録で、内藤礼がこの「ひと」を作り始めたのは東日本大震災のあとで、それから何百体と作り続けられた、と後で知った。

 

(2014年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

 

内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館 サイト

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/141122-1225_naito.html