2003年3月16日。
MOTアニュアルは、1999年からだそうだが、もしかしたら、全部見ているかもしれない。そして、毎回、何だかおもしろいと思っているような気がしている。だから、楽しみになっている。
こういう身近なテーマ、という言い方がいいかどうか分からないが、でも、実際に自分にとってリアルに思えるものって、やっぱり、こういうことなんだ、みたいな確認作業に近い部分もあるのかもしれない、というようなテーマが多いようにも思う。
デイズというのは、いつも何かを考える時に、自分が日常が好きなんだ、と思うが、それほど同じような毎日が好きか?と言われれば、そう思うし、そう思わない感じもする。それでも、こういうタイトルとテーマの展覧会が好きなのは、変わらないのか、変わってきたのかもしれないが、その変化は微妙過ぎて、はっきりしない。
野田哲也という人の作品。日記というタイトル。日付けと共に、絵がある。それが並んでいる。だけど、どこか、ドラマチックが好きなのでは?と思うような感じがある。今回の中ではダントツに年令がいっていて、それだけで語るのもおかしいのだけど、60歳を超える人だった。
上原三千代の立体も面白いと思った。上半身だけの普通の人達といえそうな人達の姿。そして、上履き。上半身の人の立体よりも、上履きのことは憶えていた。
それから、高木正勝。「美と出会う」という番組のタイトルの映像を作っている人で、ベテランかと思っていたら、今回の中ではダントツに若い1978年生まれだった。何しろ、この人の映像は、テクニックはすごいが、善意がシンプル過ぎる気がして、それが勝手に古く感じていた。ただ、それはあくまでも個人的な感想に過ぎない。
押江千衣子。ぶどうの木と思えるものを、ざっと描いているというか、素直に描いているというか、思いが伝わりやすい、というか、後で見ても、鮮やかな感じが残っていて、いいな、と思える。この絵は、妻がすごく気にいっていた。分かるような気がする。
そして、小林孝亘。この時、初めて作品をちゃんと見た。
ガスレンジの炎。ハンガーにかけてあるシャツ。寝ている人の顔。
何だか、よかった。そして、中でも原付か何かに乗っているオジサンの後ろ姿の絵。それが、なんだか凄くよかった。その印象はかなり長く残っていて、といっても、いつも思っているわけではないけれど、でも、翌年の目黒美術館の個展に行きたいと思って実際に行ったのは、この時の印象が強く、というよりも、深く残ったせいかもしれない。
また、このシリーズは来たい。
そういえば、自分がもっと若い頃には、「日常」は分が悪かったような気がする。旅が強かった。旅に出るロマンというような言葉が強かった。それが何となく嫌だったのは、自分が日常の方が好きというだけだったのかもしれない。今は旅に出るのは勇気の前に、何しろ、それが好きだっただけなのは、今になると分かる。それぞれ、好きにやればいいだけの話だったが、もしかしたら、これからの方が、自分は生きやすいのかもしれない、と思ったりもした。
(2003年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。