アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「大友克洋 GENGA展」。2012.4.9~5.30。アーツ千代田3331。

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大友克洋 GENGA展」。2012.4.9~5.30。アーツ千代田3331

 

 2012年5月26日。

 盛り上がりもすごかったし、批判が聞こえにくい展覧会だったし、わざわざ日時を指定したチケットを前もってローソンで買わないと行けなかったし、で、だから、1ヶ月くらい前に買っておいて、カレンダーにつけていたから、期待は思った以上に自分の中で盛り上がっていた。

 

 画像も見かけることが多かった。村上隆が、会場でバイクにまたがって、嬉しそうにしていたり、行きました、と入り口のところの垂れ幕の前で写真を撮っている著名人がいたりで、すごい影響を今だに持っているんだ、と改めて思い、確かに断片的な記憶の中で、圧倒的な印象として、今も確かにある。

 

 いつも行く近所のギャラリーに寄って、行くんです、と言ったら、うらやましがられ、それから、雨が降るかも、という中を妻と電車を乗り継いだ。平日の午後なのに、人がわさわさといて、スポーツの試合の前の会場みたいなざわめきがある。午後3時半前について、入場時刻が午後4時だから、まだ時間はあるので、会場の中のショップや、今回の展覧会のショップにも寄った。

 

 トイレに行って、時間になったら、いた場所がちょうど列の先頭で妻と2列になって待った。いろいろな人がいた。若い人達が多かった。自分ぐらいの年齢でないと、リアルタイムで連載を読んでいたりは出来ないはずで、(といいながら、自分は途中までしか読んでなくて、アキラの最後まできっちりと読んでいないから、読んでいる中に入っていないが)と思ったら、時々、同年代と思われる人もくる。

 

 会場に最初に入って、すぐに「AKIRA」の原画の方の会場へ行った。展示してある箱が、3本のピアノ線みたいなもので、一枚一枚ささえられて、それが、何段にもなり、そのことで、やっと全部が一応見ることが出来るしくみになっていて、そのやりかたにも感心したが、その原画は、今もすごく完成度が高かった。こんなに描きこまなくても、というテンションがずっと続いて、どの一コマもすごかった。それをマンガとして毎週、(かなり休載が多かったはずだけど)連載していた、というのは、とんでもないことで、そのエネルギーの量と質は、もう一人の人間の一生分をはるかに越えている、と思った。それに加えて、様々な原画だけでなく、絵画といっていい作品や、アニメーション映画のための原画や、これだけのものを、約40年で描くなんて、どれだけ集中したのか想像がつきにくい。

 

 すごいものを見た、という印象はしっかりと残る。

 帰って来て、「AKIRA」をちゃんと読んでいない自分に改めて気がついた。「童夢」が自分が大学生の頃で、すごいと思った記憶がある。「AKIRA」は、10年くらい連載があって、その期間が、大学の後半から、結婚するまでくらいで、一番、マンガを読んでいない頃で、そして、やっぱり、でも、その頃は読んでもそのすごさが分からなかったと思う。どうしてもストーリーで読んでしまっていたから、その絵の表現力は理解も感じることも出来なかったし、だから、トルストイと一緒である程度以上の成熟のあとに読んだ方がいい作品なのだろうとも思う。これから、ちゃんと大友克洋のすごさを、恥ずかしいことだけど、おそらく初めて分かっていくのだろう。まずは、「AKIRA」をちゃんと読もう。やっと理解できる日が来たのだとも思う。ものすごく遅いけれど。

 

 

(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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