アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

日常のフィクション 日英アーティスト達が紡ぐ6つの物語。2016.7.9~7.29。アキバタマビ21(3331アーツ千代田)。

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日常のフィクション 日英アーティスト達が紡ぐ6つの物語。2016.7.9~7.29。アキバタマビ21(3331アーツ千代田)。

 

2016年7月24日。

 

 チラシを見て、見たいと思っていた。日常、という言葉と、宇宙船の中の光景みたいな写真が全面に使われていたチラシが、妙に印象に残っていた。

 

 ただ、アーツ千代田でも大々的に行われているわけではなく、2階の一部で開かれていることを知り、ここが多摩美が経営する場所でもあるらしい。そういえば、アーツ千代田には、ゲイサイのギャラリーがあって、申し込んだ人の中から抽選で選ばれれば、そこで個展をやれる、というようなことがあったことを少し思い出した。

 

『彼らに共通しているのは、ありきたりで繰り返される日常を観察し、そこからフィクションと現実の間を行き来する物語を紡ぎだすという制作方法です。例えば、身近な人々についてのパーソナルな出来事から見え隠れする問題や歴史。架空の自然災害をもとにした物語。都会の人々が夢見る「ここではないどこか」の夢——。(中略)見過ごしがちな日常の断片を普段とは違う視点で眺め、そこから新たな物語をつくること。それは現実をリアリティーをもって想像するための、ひとつの方法かもしれません』。

 

 そんなテーマがチラシに書いてあったが、これは、どんな作品も、そうなのではないか、と思ってしまうような言葉であったりして、なんというか、日常なのにウソみたいとか、現実感が薄れたりとか、そんな作品を期待していたのだけど、というのは、自分の勝手な希望だったとは思う。

 

 坂本夏海の映像作品。坂本の祖母が戦後に横田基地でベビーシッターとしてお世話をしていたアメリカン人の男の子。その彼とインターネットを通じて話ができたら、というフィクションらしいが、その映像を見ている間は、本当のことかも、というような感じで、その淡々とした作りは、日常をしっかりと見る、みたいな感覚になり、面白かったし、それはまったくの別人の白人男性だけど、祖母のレシピのアップルパイを食べてもらって、感想をいうところはどうやらその人の本当の感想だったらしいので、微妙にフィクションの境目が、というような事も書いてあった。それは会田誠のいっていた「現代美術濃度が高いやつは現物にこだわる」というような姿勢とつながっているのかもしれないが、できたら、どちらかに徹底して、その結果として何だか分からなくなる、という作品が見たかった、と思ったものの、会場では、この作品が一番おもしろかった。

 

 そして、ジョーゼフ・ポッパーの作品「片道切符」は、1人の人間を宇宙に片道切符で送るというストーリーだということで、ただ、予算も少なそうなのに、宇宙飛行船の中で、無重力状態にいる感じが、伝わってきて、知恵と工夫を見せてもらった気がした。

 

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。