1999年9月4日。
この冬。ここに来た時も、母は病気だった。この日、弟が大阪から来たので自宅に戻り、そこから美術館へ行った。久々の日常的なパターン。今日行かないと、もう行けない。そういうあせりばかりが、いつも強くあった。
パサージュ。フランスの新しい美術。フランスは、去年、ワールドカップで優勝もしたし、という気持ちにもなっていたら、中にはサッカー部屋といえる作品もあった。アディダス。ル・コンテ。そういたスパイクが並んでいる。ゴールがあって、ゴミとしか思えないものも散乱している。どうやら、仲間とサッカーをやった後の様々なものらしい。でも、ビデオにはみんなでサッカーをやった時の模様が流れ、うらやましくなる。
薄い紙で覆われ、下には水がはってあって、そこを裸足になって歩くような作品。その冷たさは、やはり印象に残りやすい。かびで出来たものが並ぶ部屋。広島で原爆が落とされた時刻だけ、黒い線が引いてある腕時計。その時刻になると、全部が真っ白になる。どうして日本で、こういうのが作れなかったんだろう。買い物をして、その包装紙を破き、その商品と共に並べた作品。巨大なマッチ箱みたいな作品。
どこか楽な気持ちになる。
未来の暗さを、ほんの少しだけ、忘れられた。
(1999年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。