アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

シュテファン・バルケンホール 展。2007.10.27~11.17。小山登美夫ギャラリー。

2007年11月16日。

 

 友人から、カゼをひいてしまった、すごい声になってしまっ他、と電話がかかってきて、今日、行くはずだった「フェルメール展」は中止にし、そして、時間的にもフィラディルフィア展も行けそうになく、ショートステイに義母さんを送って、少しゆっくりして、妻も昼寝をしてもらって、そして、起きて、改めて希望を聞いたら、小山登美夫ギャラリーに行きたい、と迷いなく言った。

 

意外だった。ちょっと前、テレビで出てきて、倉庫の上に広がる妙に広い空間みたいな感じも含めて、行きたいと思っていた場所だし、それに以前、オペラシティーで個展をやった時、頭だけ象の人物像(?)の彫刻を写真で見て、一度、ちゃんと実物を見たい、と思っていた、という。思ったよりも動機が強かった。

 

 前に行こうと思っていて、その時に調べたら、秋葉原からバスで降りると、たぶん近いと思っていて、そのルートで出かける。秋葉原に降りたら、この前、コンピュータを買った時と違う出口で、そこはやたらと大きいロータリーみたいなものもあったし、すごくデカイ街みたいなビルのヨドバシカメラがあって、表玄関(?)になるはずなのに、もう、どこか遠い地方都市に来たような気になって、変に心細い気持ちになった。コンビニでお菓子を買って、バスに乗り、しばらく走っていると東京のど真ん中のはずなのに、クルマは確かに通っているけれど、なんとなく人の気配が少なくなっていき、夕方に近づき、そして目的のバス停に降りた時は、なんとなく背中が寒く調子が悪かった。でもたいしたことはないし、妻の気分が沈んでも嫌なので黙っていた。少し歩いて、ホントに倉庫のビルだった。大きい開くのが遅くて重い音のするエレベーターに乗った。ホントにギャラリーがあるかどうか分からないような古い箱。閉めるを押してください。と書いてあるのに、中には「閉」のボタンがなかった。7階に降りると、きれいなギャラリーだった。降りてから、「閉」を外にボタンがあって、それを押さないとエレベーターが動かない、ということらしかった。だけど、ギャラリーは、広かった。少し気持ち悪いような気もしたいたけれど、一枚、また上着を着たら、少しよくなった。

 

tomiokoyamagallery.com

 

 

 人物の像が並ぶ。

 自然に見える。

 木の削った後が、まだ残っていて、つまむと簡単にとれそうだ。それだけ、ラフに彫ってあるように見えて、最初から、その形になっているような自然さだった。

 平凡な男女の裸体だったり、普通の服を着たやや巨大な男の像だったり、首だけのデカイ像だったり、バリエーションがあったはずだが、どれも、自然にあった気がした。

 

 絵を彫ったような作品もあったが、印象が似ていた。

 立体なのに、立体な感じがしない。それでいて、印象が薄いわけでもない。印象は強いが、存在感に軽さがある。平面のようにも思える。アニメをそのまま立体にした感じというと、月並みなのだろうけど、それだけでは説明しきれないものがあるように思えた。

 

 不思議な面白さだった。

 来てよかった、と妻も笑顔だった。

 そして、スゴく技術的にもうまいように思えた。円空を勝手に思い出していた。でも、円空も、これと似た動機というか、確信みたいなものがあったように思えた。橋本治が書いていたように、円空は、あらゆるところに仏を見てしまった人らしいから、このバルケンホールという人も、木に、見えてしまっているのではないか?と思えるような、そういう種類の自然さがあると思った。

 

 きれいなギャラリーで、そして、広かった。

 他にも、このビルにはギャラリーがいくつかあった。

 事務所もかねているようで、活気があった。自分は、よく知らないくせに、ビジネスのにおいが濃いと思った。これも知らないくせに、昔の兜町みたいだと思った。今、景気がいい、というのはホントかもしれない。それは全体に行き渡るものではないけれど、こういうアートの市場が確かに出来つつあるのかもしれない、と思わせるような、独特の熱気が、そのビルの中にあった。でも、エレベーターに乗って、また1階に降りると、そういう気配はウソのようになかった。

 帰りはすぐバスが来て、だから、秋葉原に戻って、ヨドバシカメラの中の「光麵」を食べて、中の無機質な喫茶店に入り、ホントに街みたいだと思った。義母の心配はしなくていいし、やっぱり楽しかった。体調はよくなってきたように思えた。

 

 

(2007年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

amzn.to

 

amzn.to