アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「わたしの家はあなたの家、あなたの家はわたしの家」。2001.7.1~9.16。東京オペラシティアートギャラリー。

f:id:artaudience:20210622095117j:plain

「わたしの家はあなたの家、あなたの家はわたしの家」。2001.7.1~9.16。東京オペラシティアートギャラリー

 

2001年。9月9日。

 

 初めて、親戚と一緒に5人で出かけた。

 この日は、台風が近付いていて直前まで、行くのをお互いに迷っているような状況だった。

開館1周年記念で、この日は、半額だった。

 

 最初の部屋の展示物がいきなりよく分からない。

 ハウステンボスの為の提案。スクワットを続けるロッテルダムのアーティスト集団などと言っても、ピンと来ない。他のメンバーが飽きないように、と少し説明をしたり、理屈が分からないとつまんなかったりもするから、などと言い訳じみたことを、どうして自分が、と戸惑いながら、でも他の部屋へ進んでいく。

 

 部屋の上部に写真が並んでいる。ポスターウインドウという作品で、ポスターが覆い尽くすと言っても、いくつかのパターンの繰り返しというのはすぐに分かるし、これが夜のオフィス群の中をのぞいているような気にさせます。と説明があったりしたが、少し無理がある。首都高速を夜に走って、そして、その時に見ているオフィスのビルは、人がもっとくっきりと見え、そして、こんなに長い間、一緒にいれば、ここで深刻に対立したらすごく辛いし、逆に付き合ったりしたりも当然だよな、まで思わせる風景でそれに比べれば、はるかにリアルではない。だけど、この展覧会場の上の方にずーっと流れているから、そういう意味では、他の展覧会には見られない統一感は、この作品で確かに感じられるかもしれない。

 

 ホームシネマと題された作品。他の人が見てるから、見られない。それに、これもピンとこない。

 

 やっぱり、電化製品のドームを作った作品。エスキモーの住居をかたどったそれは、入ると思ったよりも広く、それは、いろいろな電化製品。クーラーとかファックスとか、後なんだかよく憶えていないのは、何故だろう。どれもかなりなじみがあるものばかりだったはずなのに。こうした電化製品の裏側ってあいそがないね。そのすきまを小電化製品でうめてくれれば、もっとよかったのに、と実にリアルで正確な感想を、妻が述べていた。

 

 部屋を区切るところに、小さな写真がはってある。メードイントーキョーとかトーキョーリサイクルガイドブックとかペットアーキテクチャーガイドブックとか、後で見ると結構魅力的だったり、ショップで見て、本になったのを見たりするといいなあ、と思えたりするのに、この展覧会場で見るには、ちょっと違う気がしてしまった。

 

 ただ、この作品とホームウエアという、会場のそこここにあるマネキンが着けた移動用の器具といっしょで、一通り見た後でまた見て、その時に初めてなるほど、と思える点は共通していた。

 

 山出淳也のカーテンを借りてくるプロジェクト。会場の高い位置に何枚もかけられていて、その中には小沢剛のもあったが、どうもピンと来なかった。もっと狭いところで、多くの人が住んでいるようなところと近い大きさのところに、たくさん並べるとかした方が、もっとリアルだと思えた。

 

 そして、スゥ・ドーホーの作品。

 ニューヨークの自分のマンションをそのままかたどりして、半透明な布で再現するというのは、前もっての情報として知っていたのに、実際に見ると、何だかよかった。思ったより狭いとか、建築前の家はやたらと狭く感じるのに、建って、住んだりすると、それより広く感じるとか、小さな頃のはらっぱに作ったすすきの秘密基地とか、そういうスペースというか縄張意識とか、そんな感覚を思い出し、そして、その布で再現されたものが、美しかった。妻も絶賛。

 

 そして、相談芸術ホテル。ここに人が実際に泊まったらしい。カプセルホテル。「こち亀」が全巻揃えてあったり、と意見が反映されたりもしていたが、確かに人に相談して、それで作品を変えていくという狙いは実に鋭いというか、オリジナルって何だろうとか、そういったテーマにも迫りそうな感じはするが、でもマンガが「こち亀」だったり、と何か善意すぎる匂いがしてしまう。

 

 スピリッツで、相原コージが、それこそ相談ギャグマンガを試みていて、それは単行本「何がおもしろいの?」になってから初めて知ったのだが、その読者からの妙な悪意の噴出とかの方が現代のリアルを感じたし、今の「少年ジャンプ」を久しぶりに買って、そのハガキを読むと、この号で始まったばかりのバスケットをテーマにしたマンガについて、3人の登場人物。男の子2人と女の子1人。これから、ストーリーをどうしてほしいですか?といった質問まで、あった。1、3人がストリートバスケットの大会に出場する。2、3人がそれぞれの高校のバスケット部に入って、活躍する。3、3人の恋愛となる。

 確かに、どの方向にも行けそうな導入部ではあったが、こういうアンケートハガキを見ると、アート界の相談芸術は、まだ善意に支えられ過ぎてる気もする。ただ、悪意の噴出も、読んでいて気持ちが悪くなるものもあるし、何だか、嫌になるから、どちらがいいとかいうものでもないのかもしれない。

 

 初めて、親戚と一緒に見て、こちらは楽しかったが、相手はどうだかはっきりとは分からない。ただ、中学3年生で、あれだけしっかりと文章も書けて、大人だった。自分が中学生の頃、女子が「同じ年の男の子は子供で」みたいなことを言っていたような気もしたが、でもそういうセリフそのものを言ってくれないほど、自分はガキだったと、こういう中学3年生女子の発言を聞くと、改めて思い知らされる。

 そういうことを含めて、有意義だった。

 

(2001年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.operacity.jp