アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「ネオ・トロピカリア/ ブラジルの創造力」。2008.10.22~2009.1.12。東京都現代美術館。

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「ネオ・トロピカリア/ ブラジルの創造力」。2008.10.22~2009.1.12。東京都現代美術館

2008年12月23日。

 義母をショートステイに預けているので、ゆっくり出かけられた。妻と二人で出かける。東京駅からバスに乗り、昼食を食べながら座っていて、自分のバッグがイスから転げ落ちそうになったので、それもチャックが開いていたので中味がバラバラに落ちる映像が見え、なんだかあわてて、そのバッグをつかんだら自分が持っていたペットボトルの紅茶の中味がキレイに流れ出てしまっていた。それをティッシュでふいたが何となく湿っていて、だから、隣に人が座らないようにと思っていたら、荷物を持った高齢のご夫婦が座り、その場所に紙袋の荷物を置こうとしたので、そこにビニール袋を置いて、説明し、という間にバス停に着いた。

 

 ロビーから色が鮮やかで大きな作品があった。

 かなり高い窓をおおうようにきれいな色のパズルのような作品があって、それで、美術館全体のイメージが明るくなっている。荷物をロッカーに預けて、3階へ上がり、最初の部屋にある作品のすみにあった写真がよかった、と思い、妻も好きだと思い、声をかけたら、やっぱりそうで、台所などで野菜を切ったのを並べてみたり、それは、どうやらブラジルやその他の建築をモデルに作ったもの、という説明がついているが、それより何だか小さく繊細できれいな作品になっていて、それを写真に撮影されたものが並んでいた。

 

 その部屋から次の部屋へ行くと、エリオ・オイチシカという1960年代に「トロピカリア」と題されたインスタレーションにより、ブラジルアートの独自性をうちたてた、とされている人だというのをリーフレットで初めて知り、ただ、この人の作品は60年代と言われて、確かにそういう古いきちょうめんさがあったりもするけれど、色付きの部屋だったり、これも最後にマンゴージュースを観客に飲んでもらって体内に色を取り込む、みたいな部分があったり、それから、他のいろいろな作品でも音楽が本当に大事に扱われているせいで、なんだかずっとエネルギーを確かに感じるものがあり、それで、なんだか違う凄さを感じるような気持ちにもなったりする。

 

 次のマレッペという人の作品が、今回のチラシにもなっている金属の大きなバケツみたいなのを頭にかぶった作品もそうだった。でも、どうしてあれを大きく扱うのだろう、という疑問もあったのは、海辺で上半身ハダカの人がかぶっているせいで、なんだか必要以上に南国みたいなことが強調されていて、そのエネルギーみたいな事も言われてるようだ。

 

 この人の甘い空という作品は、たぶん綿菓子を頭の上にかざして、それを食べ、その様子を組み写真として下から撮影している、というだけのもので、どこかに笑いがあったりするが、全体でも、当然かもしれないが、繊細な気配があるのに、トロピカリアという文字で、あの上半身ハダカの写真では、なんだか先入観が作られてしまうようにも思った。

 

 他にライスペーパーに描いた絵はよかったし、葉っぱをさすと音楽が聞こえてきたり、紙か何かのドレスを着て最後にそれを全部やぶくというファッションショーのような映像(ジュン・ナカオ)を見たり、3階から地下1階の吹き抜けを使ったエルネスト・ネトの作品は、思ったよりも未完成な感じと大掛かりなのに身近な感じまでして、よかったし、全体に音楽が使われていて、それがずっと聞こえていて、それがなんだか楽しいような空気を作っていたと思う。

 

 サンバとかそういうのだけでなく、当然かもしれないが、繊細さもすごくあったし、街の中の道路の排水口を3日間光をあてて明るくし、その存在を意識させる作品などを作っていたルーベンス・マノのは写真しかなかったけどおもしろそうだったし、古くなった住宅の壁を住民と相談のうえ、鮮やかな色を塗るというプロジェクトをしている建築家がいたり(ルイ・オオタケ)いろいろとバリエーションもあって、今日は祝日のせいか、思ったよりも人がいたし、もっと大勢が来てもいいのに、と思うくらい面白い展覧会だった。イッセイ・ミヤケの大地からいろいろな色をとって、それで服を作るという作品(プロジェクト?)もあった。

 

 コーヒーを飲んでから、また常設展を見た。加藤美佳や島袋や奈良美智名和晃平の作品が並んでいて、豪華だった。見てよかった。

 クリスマス前の華やかさは、あんまりなかったかもしれない。

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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