1999年11月。
振り返ると介護の日々の中でも、時間があれば美術館へはけっこう行っている。それは、でも感情をキープするために必要なことだと思う。東京都現代美術館。コレクションによるテーマ展示。
ギャラリーガイドがあるからと午後2時を少し過ぎて、走っていったら、違う団体だった。でも、実際のガイドは、期待してほどではなかった。こうした説明を聞いても、あーそうか、などと思わなくなったのは、こちらの知識が変に増えたせいもあるかもしれない。
洗剤や新聞を陶器で再現した作品を見ても、あ、ウォーホールみたいだと思い、わざとピンぼけにした建築写真を見ても、あ、リヒターなどと思ってしまい、目の前の作品に集中できない。
同じ人間で、たいした違いを出せるわけもない。まったく違った宇宙人がいるとして、そういう視点から見たら、人類がやっていることなんて、どれも違いが分からないと思う。それでも人間の中にいると、もっと違うものが見たい、と気持ちが要求してしまっている。
観客ってぜいたくなんだ。自分も含めて。
(1999年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。