アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

松田修 展「オオカミ少年 ビデオ」。2009.8.20~9.19。無人島プロダクション。(高円寺)

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松田修 展「オオカミ少年 ビデオ」。2009.8.20~9.19。

無人島プロダクション。(高円寺)

 

2009年9月5日。

 

 模擬試験が高円寺の予備校でやっていたので、午後3時半に終わり、このプロダクションは時々、展覧会をやっていて、少し眠かったけど、寄った。入り口を入ると、誰もいなくて、スタッフの若い女性が出て来て、説明してくれて、いくつもモニターが並んでいて、ボタンを押すとスタートすると教えてくれた。

 

 自分の男性器にホースをつないで、その端から液体が出ていて、それを飲んでるみたいなビデオ。これは3枚組の写真の作品にもなっていた。それから、お尻の穴から出ているソーセージを食べているかのような映像。屋外で強引に性交している、という設定の映像。これは、キレイです、とスタッフが言っていた。

 

 ボクシングのグローブをつけて、こちらへ向かって打っている映像に変な音が重なっていると思ったら、おならの音と共にパンチを出しているんです、と説明してくれ、ここで「バカですねー」と笑ったら「そうなんです。ばかなんです」と答えてくれた。それほど若くはないけど、美大の大学院を卒業したばかりの人らしく、ここで新人らしい。

 

そして、奥には机が並んでいて、事務所の機能の方が優先していそうなスペースに、一番、大きいモニターがあって、「これは直接、映っているので」と言ってくれたら、始まったら「インケイ先生の伝言(遺言だったかもしれない)」と文字が映って、ちょっと笑ってしまった。そしたら、男性器の先のアップで、尿道の入り口を口のようにぱくぱくさせて、しゃべっている、という内容だった。かぶっているとか、かぶっていないとか、それじゃ、差別なんてなくならん。みたいな言葉だった。

 

 スタッフの方が嫌そうな顔をしていて、愛想のつもりで、男の子は似たよな事をやりますよね、と言ったけど、やっぱり嫌そうな感じは同じで、作品のファイルを「見ますか?」とちょっと嫌そうな顔のまま渡してくれて、そのスタッフの若い女性がおすすめしてくれたのは、スーパーマリオなどのゲームの映像からとった空を絵画にした作品で、これなんか、キレイだと思うんですけど、と言った。壁には、薄毛の頭から飛んだ髪の毛と、鼻から飛んだ鼻毛が交わる、みたいなものを小さい絵を重ねて描いてあった。でも、ビデオは面白かった。

 

 そういえば、ここで去年見たレコードをレールにした作品があって、同じ人が原美術館で見た氷のレコードの話をしたら、スタッフのテンションが上がった。

 

 今回の映像作品はDVDでエディション番号をつけて、という売り方らしいが、レコードの話の時には、奥からさらにここの責任者らしきベテランの女性が出てきて、あの作品は評判がよかった。あれはレコードの製氷皿を伊万焼の大皿を桐の箱におさめて売っているが、ああいう風にして、あの型を販売している、とスムーズにしゃべった。買う人に思われたのだろうか。見ているだけで、すみません。と言って階段を降りた。

 

 考えたら、奈良美智のTシャツを着ている中年は変かもしれないし、だいたい、この小さい展覧会を見にきて変に詳しかったら、そりゃ売ろう、という気になるのも当然だった。

 

 今日見た作品もけっこう好きだったけど、これからどうなるんだろう、とは思った。チンポムも、このギャラリーだった。また来てください、と言われたけど、最後まで若いスタッフは少ししかめっつらに見えた。模擬試験を受けて、その時に、展覧会をやっていたら、おそらく、また寄ると思う。辛酸なめ子の作品の時だったらいいな、とちらっと思った。

 

 

(2009年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

「公の時代」松田修卯城竜太

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