アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

ボーメ個展「プシューケー」。2009.12.11~23。カイカイキキギャラリー。

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ボーメ個展「プシューケー」。2009.12.11~23。

カイカイキキギャラリー。

 

2009年12月17日。

 

 ゲイサイ大学に行ったときに、ボーメ展をやるのを知り、見に行きたいと思っていた。妻は、FM芸術道場で聞いていて、私よりも、その展覧会について詳しかった。家には、いつも食玩のココちゃんもいるし、オタクではないし、フィギュアそのものにもそれほどの興味がないのに勝手に身近に感じている。

 

 広尾の駅で降りて、今年はゲイサイ大学で9回は来ているから、今年では一番多く来ている駅かもしれないけれど、また同じ坂を上って、ギャラリーへ下がる。階段のところに小さく、看板みたいなものがあるだけで、妻は、これじゃ、分かりにくい、と言っていたら、マンションだし、広尾だし、有栖川だし、何かしらの規制みたいなものもあるかもしれないし、通りすがりの人まで呼び込む気はないのかもしれない。

 

 入ってすぐに、鬼娘、というラムちゃんの進化系みたいなフィギュアが4つんばいになっているのがあって、その大きさが微妙だった。いつも見ているようなものよりも、3倍くらい大きい。乳房のあたりのふくらみや、ヒョウ柄のブラのすき間や、パンツのくいこみ具合いも含めて、よくできている。いくつか、その大きさのフィギュアが並んでいて、それは小さいものと比べても完成度が落ちるわけでもなく、よくできている感じが大きい分だけ伝わる、などと思っていたら、妻が、この大きさはボーメさんしか出来なくて、だから価値がある、ということを教えてくれた。芸術道場の成果だと思う。

 

 それから、テレビ番組の映像が流れていたり、本人のインタビューも流れていたり、他のフィギュアもよく出来ている、としか言いようがないけれど、中にはものすごくマントがいい具合にぼろぼろで、これは大量生産は難しいのでは、と思ったら、それは作品として作ったものだと、説明で知った。

 

松平(?)氏というフィギュアライター(こういう仕事があるのも初めて知ったような気がする)の文章もいい意味で専門家の感じで、時々、村上隆の説明もあったりして、じょうぜつではないけれど、きっちりと明確に分かるようにしてあって、というところにも感心する。

 

 フィギュアはちゃんとエロチックで、お尻とか腰とかおなかとか、見事に柔らかそうで、それでいてたるんでいなくて、すごかった。等身大の鬼娘のフィギュアは、その手の置き方の圧力まで伝わってくるようで、なんだか命みたいなものを感じた。村上隆と、いっしょに作ったココちゃんのシリーズと比べると、よりプライベート、という書き方を村上自身がしていたが、確かにそうで、なんというか、少しあたたかい作品になっているように思えた。よく出来ているけど、怖さが少ないというか、お尻や腰やストッキングのしわや、確かにすごくよく出来ているけど、それだけでない、みたいな感じがした。ただ、他のフィギュア作家の人の作品をちゃんと見たことがないのだから、比較が出来ないので、もしかしたら、そういう他の人の作品も見たときに、ボーメのすごさ、というか、特異さというか、そういうものが分かるのかもしれない。それにしても、村上隆とボーメが同じ世代、というのは(もし学校が近所だったら一緒の学年)偶然だけど、偶然でない感じもする。それは、共有できるものの多さ、というのがベースにあるのかもしれない、という意味でも。

 

 あとから、何人か男性の客が来ていた。いつものこのギャラリーとは明らかに違った気配で、2、3人じっと見ていた。やっぱり引きつけるものはあるけど、でも、この作品を買ったら、既婚者だったら、奥さんに嫌がられる種類のものだと思った。そして、村上隆の作品は、そうでないだろう、と思ったときに、その違いが少し自分の中では明確になるような気もした。

 

 

(2009年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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