アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「線を聴く」。2015.4.24~7.5。銀座メゾンエルメスフォーラム。

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「線を聴く」。2015.4.24~7.5。銀座メゾンエルメスフォーラム。

 

2015年7月5日。 

 当然だけど、入り口が完全にエルメスのショップの中を通り、3人くらいしか乗れないようなエレベーターに乗り、いわゆるえんぴつビルというようなエレベーターと形状だけは似ていた。だけど、購入できないし、と思いながらもエレベーターは上昇し、買物客と一緒に狭いエレベーターに乗っているのは、こちらが申し訳ないような気持ちにもなったが、息を止めるようにして、時間が過ぎて、8階のギャラリーはこれまでにないほど人がいたような気がしたのは、最終日の日曜日の、あと1時間くらいで終る時刻だったせいだろう。

 

 エレベーターのすぐそばには、小さなドローイング。その隣に制作風景。1から9までをボールペンでずっと何度も描き続け、それを作品にしたのだと分かる。イグナシオ・ウリアルテというアーティストの作品だと分かったのは、いろいろなものが並ぶ中に輪ゴムがしきつめるように置いてあるそばに立っていたスタッフに聞いたからで、この作家は、壁にA4の紙が並べてあるが、それを折ることによって、立体的な線があらわれていて、そして、輪ゴムも3メートル半径くらいだから、この場所で3日くらいかけて作業したらしく、日常的なもの(オフィスらしい)を使って、日常的でない作品を作る人らしくて、それを聞いて、その作品がよけいにいいものに見えた。

 

 シュ・ビンは山水画を、植物やゴミみたいなものを並べ、そこに光を当てる事で、再現するような作品を作っていて、すごい、ということが分かりやすいのだけど、若い購入力のありそうなカップルがその表と裏を何度も見て、意味が分からない、と繰り返していた。

 

 鯨津朝子(ときつ、という名字なのを初めて知った)の作品は、このギャラリーに、伸び伸びとした線を描いている。一本の線が10メートル以上はあったりするのだろうが、それは、天井の空調や、ギャラリーの上の階の天井にまで伸びていて、それは、会期が終ったら消されてしまうものだと、やはりスタッフに聞いたが、やっぱり気持ちがいいものだった。そして、説明によると、9点、角度によっては、この切れ切れに見える線がつながる場所があるんです、とも教えてくれたので、探したら、3カ所くらいは見つかった。手前と、向こう側の天井の線がつながったりするので、その人に御礼を言って、9カ所は無理そうですが、3カ所は見つかりました、と言ったら、すごいですねー、と笑顔で言われる。

 

このギャラリーの展覧会は、意欲的だと勝手ながら思う。リーフレットなどの紙質は明らかにいいような気もするのは、自分の中のひがみだとも思う。

 

 下りのエレベーターで3階から4人の客と一緒になった。中年の男性、そのパートナーらしき若い女性、さらに初老の夫婦らしき2人。確実にお金持ちに見える。中年男性が、おかげさまで結婚指輪を決めることができました、といった話を、その初老の夫婦にしている。エレベーターが1階についたら、その中年男性が、一番奥にいて、さっと出ようとしていた私にまでドアをあけていてくれて、御礼を言った。

 

 

(2015年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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