2013年8月29日。
ちょっと遠かったけど、ツイッターで椹木野衣が「フランシスベーコンを見るのなら、これも見ないと」というような言い方で勧めていたので、ホームページで見たら、インパクトと温かさとウソのなさと他では見た事のないイヌの絵があって、やっぱり見たいと思った。
鎌倉は遠いというイメージがあったので、前に行った時は確かショートステイかなにかで時間がかなりあったけど、どうしても見たいと思い、もう会期も最後に近かったので共通の友人を誘って出かけた。鎌倉まで、それでも1時間くらいで着いた。わりと近い。ただ、そこからまた歩く。しかも小町通といういろいろな店がやっている通りを歩くから、きょろきょろしながらだし、時間がかかるから、と思いながら絵も見たいし、早く行きたいしと思いながらも、やっぱり妻も友人も店を見ながらゆっくりと歩いていて、でも、着いた。
古いコンクリートの造り。もうなつかしい感じがする、固まっているのに湿った印象と古さがある建物。2階が展示室。松田正平。義母の2歳上。学生時代の絵は、基本通りの絵。だけど、この絵を描き続けていただけでは、こうやって展覧会も開かれなかっただろうし、見る機会もなかったと思う。
ホームページで見た絵になってきたのは、50歳を超えて来たあたりからで、薄く塗った油絵という印象になってきたが、それよりも自由な気配が強くなってきて、それまでのきっちりした感じが少なくなって来て、色も透明になってきて、形も、「こう見えているんだろうな」という描き手の印象が前面に出て来来ているように思えてくるのだけど、そこに押しつけがましさとか、個性的みたいなものではなく、そうなんだろうな、と思えるような絵になってきている。
そして、描くものは本当に身近なものが多くて「四国犬」というタイトルの絵は何度も出て来て、すごくいい。そして、バラの絵のシリーズがあって、バラというどこかゴージャスというものにも通じる花よりも他の花のほうがふさわしいような絵だとも思ったが、その解説には、戦後なにもなくなり色彩すらなくなったと感じた作者にとって目にしたバラは、とても美しく思えた、といったような言葉があり、その時の気持ちを忘れずに、ずっと描き続けたんだろうな、と思える花で、だんだんよくなってきている。60歳を過ぎて、さらに薄い色使いになり、形も自由になり、見ている側の気持ちによりダイレクトに入ってくるような絵になっている。
第2室は、周防灘のことを書いた風景画だけど、雲がくっきりと青で区切られて並んでいる。ああ、こう見えたんだな、妻は「風景が浮かんでくるね」と言っていた。気持ちがやはり明るくなる。単純に元気が出ました、というのではないけど、一緒に行った友人が「絵が描きたくなった」と言っていたから、そういう力があるのだろうと思う。
久しぶりに鎌倉で、いい体験が出来た。カタログが欲しかったけど、完売していた。スタッフの人が、一度増刷したんですけど、それも売り切れました、申し訳ありません、と言っていた。残念だけど、ポストカードを買って、帰った。
(2013年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。