1999年6月22日
1956年。ノルウエー、オスロ生まれ。大学で6年間心理学を学び、卒業直前に、独学で画家を目指す。6年後には、ノルウェーのナショナル美術展に出品し、その2年後、87年にはそこで1等賞となる。
そんな経歴が、入場券の裏にも書いてあった。
でも、そう言われても、ほとんど何も分からない。
ノルウェーも、行ったことがない。
ただ大学で学んだこととまったく別の道に進むことに、それほどの抵抗もないのは、サラリーマンとなって、なんでもやらなければいけない日本の常識に、どこかで根っからやられているせいかもしれない。学生気分じゃ困るよ。そして、入社したら、まず、それまでを下手をすれば早く忘れないといけない。みたいなノリが今でもあるせいかもしれない。
布を人物像の服のように絵につけたり、絵のこちら側にガラスを置いて、そこに着色などをしたりして距離を作ったりするのは、『現代』という感じがするが、でも、この時代にこんなにストレートな人物の表情を出してくるなんて、人物が何か語っているような絵なんて、そして平気で社会派の気配なんて、凄い。もしかしたら、布やガラスも、そのストレートさを現代に通すための、一種の戦略かも、と思ったりもする。
「イギリスの炭鉱夫は、小鳥を深い坑内へ連れていく。空気が不足していれば小鳥が気配に気付き、鉱夫たちに危険を知らせるからだ。かつて美術家はいつもこの『予兆』のような鳥の存在だった」。
作家の言葉として、入場券の裏に書いてあった。
1989年以来、明らかに世界が変わった。そのことに大きく影響をうけているかどうかで、ずいぶんその後が変わってくるような気がしている。
ただ、このサビエが、影響をうけつつも、あえてなのか、それとも、自分の方法でひらすらやろうとしているだけなのか、どちらなのかは、分からなかった。
でも、少し恐かったけど、見て、よかった。
ストレートでも、本気かどうかで、変わってくる。
それが、分った。
この作家は、本気だと思う。
(1999年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。