アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

ピエール・ボナール展。2018.9.26~12.17。国立新美術館。

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ピエール・ボナール展。2018.9.26~12.17。国立新美術館

2018年11月22日。

 ほとんど知らない人だった。色が鮮やかだったり、印象派のようで印象派と違うのは、もっとプレイベートな感じがするのか、よく分からないし、確かナビ派という名前は知っていたけれど、勝手に北欧というか空気が冷たい人たちが主流だと思い込んでいて、そして、やたらと装飾的なのでは、という印象を抱いていて、ただ、ボナールの名前が出る時にパープルームと関連づけられていたこともあって、興味はあった。

 

 六本木駅に着き、そこから国立新美術館まで行こうとしたら、出口によっては、わりとすぐ近くに美術館はあった。外に入場券売り場があって、考えたら、現金を扱ったりするのに、外にあるのは不思議でもあったのだけど、混雑みたいなことを優先しているのかもしれない。すぐ外にある政策研究大学院大学というのが、すごく不思議でしかたがない。

 

 入場券を買う。一枚1600円。隣の白髪の高齢者の男性が、シニア料金のことを問い合わせているらしく、マイクを通して、申しわけありませんがシニア料金はございません、といった言葉が聞こえる。入るまでに平日なのに、人がいっぱいいて、そして、自分たちも含めて年齢層が明らかに高い。入り口までにコインロッカーに荷物を入れて、トイレに行ったら、女子トイレが混んでいて、妻が少し待ってから入る。

 

 日本かぶれの、というような異名がついていた、というが、やたらと色をべったり塗ったり、色鮮やかだったりするものの、印象派の画家のように、センスや技術的にはすごい感じも薄いし、その異名は悪口だったのかもしれない、と思い、同時に、生活が豊かな人ではないか、というのは分かりやすくあれこれと示されていて、ただ、色はきれいだった。

 

 絵の具を遠慮なく使える背景もあるように思えるが、絵がポップで、今の絵みたいにも見えるし、どこか気楽な見方も出来るし、と思っていたが、途中から、のちに妻となるマルトをモデルとした絵が多くなってくると、妙にプライベートな感じが濃くなってくると共に、ここに来て初めて知ったのだけど、その妻との関係が微妙なことを知った。

 

 裸の描き方が、どこかフェルメールに似ているのは、人の無意識な状態、というか、人の目を気にしていない状態を描こうとしている感じが似ていて、それは、誰も見てないような感じにするのではなく、いつもの視線だから、どこか意識しなくなっている状態の裸を描いているように思えた。

 

 特にマルトが体を洗う時に、ホントにきれいにするためだけに、体の見え方が、本当に物質みたいに扱っているようなちょっと股を開いて、ぎしぎし洗っているような感じで、それはスナップショットにもあったが、その写真は、自然で力みもなくて、日本のヒロミックスの女の子写真を、100年前に撮っているので、今だったら写真家になっていかもしれないとも思う。そんな軽さと明るさがあったが、家族の絵などには妙に暗さがあって、60歳を超えた自画像の顔は本当にほぼ暗く塗っている。動画が残っていて、ボート遊びをしていて、それは少し昔だったらヨット遊びだったのだろうな、というようなことを思ったが、昔の貴族がこんな感じだったんだろうな、と思えるくらい中心のボナールらしき人は沈んだ顔をしていた。

 

 マルトのプロフィールを読んだら、ボナールが26歳の時に出会って、その時に16歳と自称して付き合い始める。病弱で、繊細で、ということらしかったが、結婚した時に、8歳サバよんでいて、実は二歳下だと、そして、その時に本名も初めてボナールが知ったらしい。二十四歳の時に、16歳といえること。そして、50歳の頃に結婚、それも、その頃にボナールが他の女性と付き合っていたらしき感じを知って、結婚を迫った、といったようなことがあり、さらには、その女性は結婚後は、自殺していて、というようなエピソードを読んだ。平和そうに見えて、いろいろあって、そのことについて、あまり発言していないらしいが、部屋の中の静物画が、平面的で、その上で、色が鮮やかでこんとんとしていて、それで妙な広がりもあって、不安定できれいだったりして、最後はアーモンドの樹だった。

 

 思った以上に興味深い人だった。それがゴシップ的な興味かもしれないけれど、身近な題材が多いだけに、その影響はあって当然だし、とも思った。

 

 

 

 

(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)

 

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