アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」。2008.4.25~7.13。森美術館。

www.mori.art.museum

 

2008年7月5日。

 

 前から見たいと思ていたデミアン・ハースト。サメも見たいけど、ホルマリンシリーズが見たかった。たぶん、とてもミーハーな事なんだと思うけど、でも、見たかったので、ターナー賞展をやる、それもデミアン・ハーストの作品が来る、というのは初めての事だろうし、これからもチャンスがないかもしれない、と思うと、ホントにぜひ、行きたかった。

 

 義母がデイサービスに行く日に、妻と一緒に行くことにした。それほど乗り気ではなかったけど、でも、プラスになるから、とちょっとわけの分からないことを言って、でも、何しろ出かけられることになった。天気も雨みたいな事を予報で聞いたけど、晴れていた。

 

 六本木につくと、ホームの階段を上がると、警官が棒を持って立っていた。最近は、棒を構えているけど、ああいう圧のかけかたは、やっぱり気持ちのいいものではない。美術館へ向かうと、人が少ない気がした。そして、エレベーターに乗る前には手荷物検査でカバンを開けた。やたらと警備の人が多かった。

 

 52階にあっという間について、そして、公衆電話があったのがなくなっていて、閉じ込められた感は前より強くなって、でも同じ入場料で屋上みたいなところに出れるようになっていて、そこに行く人のための手荷物を預ける場所が混雑していて、危険な場所に行く感じのばたばたした空気と緊張感があった。

 

エスカレーターを上がって、そして、最初にターナーの絵があった。このターナーとは今は、関係ない賞のような気もするが、でも、この人もこの時代ではけっこう妙な絵であったのだから、そういう意味では名前を裏切っていないのか、などと勝手な納得をして、進む。

 

 トニー・クラッグの作品。プラスチックのごみをはりつけて形にしてある。

 ダグラス・ゴードン。「サイコ」を24時間かけて映写した人。ここではジキルとハイドの変身(?)シーンをものすごくゆっくりと映していた。それから、60分間、じっとしていて、という作品。

 

 あと、その部屋に何があったか、憶えていない。

 それから、ギルバート&ジョージ。でかいパネル。その前のイスに座っている2組のカップル。この人達の作品は、生活含めて、とうのだから、そのあたりを見て、初めて、そのスゴさとか面白さとかが分かるのだろう、と思う。

 

 リチャード・ロングの石を並べた作品。(こんな風に要約されるのを、一番嫌がりそうだけど)。

 

 ライトが5秒ごとについたり、消えたりするだけの部屋。広くて、その時に誰もいないせいもあって、その空間が貴重なものに思えたりもした。思ったよりも面白い感じがした。スズキヒロシ氏の作品。何もない空間の事を思い出した。この人の新しい作品は、テートモダンで、30秒ごとに人がダッシュする、という作品らしく、見てみたいと思った。

 

 そして、デミアン・ハースト。牛がまっぷたつ。ホントにきれいに切断してあって、親の牛は思ったよりも大きく、そして、ホルマリンの薄いブルーはキレイにも見える。親の牛の真ん中は通れるようになっていて、思った以上に混雑している。前を白人の初老のちょっと豊かでオシャレな夫婦らしき2人が見ている。どうやら、胃袋の数を数えているようだった。内臓は、頼りなく見えた。この部屋で、やっぱり、インパクトが強かった。前にいる小さい女の子も、この間にけっこう長いこと、その母親と一緒にいた。

 

 他にも、インテリジェンスが前に出ているような作品や、ガプーアの立体とか面白かったけど、それから、熊のきぐるみを着て、ベルリンの美術館の中で1日過ごす、というビデオが見ていると、思った以上に面白かった。

 

 それとは直接、関係ない、サスキア・オルドウォーバースという人のビデオ作品の、湿った、他では見た事がないような、でも知っているような映像作品も面白かった。夢を映像化するとしたら、この感じになるのかもしれない。映像と、ナレーションが関係があるようで、ないようで、でも、すごくフィットしているような感じまでした。

 

 最後の部屋で、ターナー賞授賞式のビデオが流れていて、ホントにエンターテイメントなんだ、と思った。華やかだったし。

 

 だけど、見終わって、エレベーターを下りて、その頃には印象が全体的に薄くなっていた。現実感がとぼしいような。いつも、冷房で芯まで冷えてしまうせいかもしれない。

 でも、見にいってよかった。

 そのあと図書館でデミアン・ハーストのインタビュー記事を読んで、この人すごい、と改めて思い、そして、作品見て、その気持ちは変わらなかった。見にいって、よかった。デミアン・ハーストの個展を今度はやってもらえないだろうか。

 

 妻も思ったよりも、牛も含めて熱心に見ていた。

 来てよかった、と言ってくれた。

 ありがたかった。

 

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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