アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「杉本博司 ロスト・ヒューマン」。2016.9.3~11.13。東京都写真美術館。

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杉本博司 ロスト・ヒューマン」。2016.9.3~11.13。東京都写真美術館

 

2016年10月22日。

 何年か前にリニューアルのために閉館する、という話を聞いた時は、もしかしたら、2度と開かないのかもしれない、といったことも思ったものの、ちゃんと開館することになり、それも杉本博司展ということで、それも、写真だけでなく、インスタレーションらしい、ということも、いろいろと意外でもあったのだけど、映像などで見るのは、もしかしたら見た事もないようなことなのかもしれない、といった事も思った。

 

 何しろ最近、妻が杉本博司は、すごいということを、直島で作品を見て以来繰り返していて、特に「海景」は、最初に見た時よりも、その古代の人も同じ風景を見たかもしれない、といったことを思うようになったら、その長い時間まで一枚の写真に入れたことを思うと何だかすごい、というのが分かって頭がいい人だというのも伝わってきて、森美術館での個展は見たかったが、体調が悪かったりとか、いろいろとあって見られなかったが、今回は妻の要望もあって行けるようになった。

 

 トップミュージアムという名前があって、それは、写真美術館の名前でもあるらしいのだけど、入場券を買うところの受付のスタッフがやけに前に出て来る感じにはなった、という変化はあって、さらには、土曜日のせいか、人がたくさんいて、写真美術館に来て、これだけ人がいたのは記憶にないから、興行としては、しかもリニューアルのオープニングとしては成功なのだろうと思った。

 

 いろいろなものが置いてあって、そして、全部、文章がついている。申し訳ないのだけど、途中で少し飽きた。それは、最近、読んだ本の「人類は有限なのだ」という話がすごく説得力があって、恐竜も滅びたように、人類も自然に滅ぶんだろうな、と思ったし、たとえば太陽が巨大化して地球を飲み込んでしまう時期というのがあるそうで、それははるか未来の話ではあるのだけど、そこまで人類が続いていて、そこで脱出しているような技術はなくなっているのではないか、そして、その時に人類として生きているような人たちは、どうしようもなくなっているはずで、とか考えたりもしたが、それぞれいろいろな人類が滅びる話をしているが、もっと写真があるかも、と思ったが、時々動きのあるオブジェがあって、電気の放電については、スタッフがよびかけ、人が集まったり、ロブスターの人形が踊る時は、自分も含めて、人がゾンビの群れのようにあちこちから流れるように集まってきた。

 

 次の階の映画のスクリーンを使った作品は、新作だったらしいが、廃墟のスクリーンというところがミソだったみたいだし、仏像の写真は、その姿の異様さが、やっぱり際立っていて、これを撮ろうとしたことそのものが凄いと改めて思ったが、だけど、大丈夫だろうか、みたいな事は思った。

 

 スキは少ないけれど、今、人類の滅亡をテーマにしたのは、意味があるとしたら、やっぱり原子力に関しては、もっと踏み込んだものが欲しかったというか、たとえば、その滅亡のサインは、誰も気がついていなかったけど、こんなにはっきりと写真に撮れる、といった1枚の写真でそれぞれ表現してくれれば、と思ったが、それは観客として、ぜいたくすぎるのか、とも思った。

 

 でも、それを見せてくれる人だとも思っていたのだけど。すごく薄い記憶だけど、人間の遺伝子のコピーが劣化していって、そのために男性がいなくなるとか、そんな話を読んだ気がして、そういうような予兆が写真として見せられたら、すごいと思えたのに、というのは勝手な要望なのもわかっていた。

 などと言っても、いろいろな理論を向けられて、正当化されてしまうように思えた。

 

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

topmuseum.jp