アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「霞 はじめて たなびく」。2019.2.23~3.24。トーキョーアーツアンドスペース本郷。

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「霞 はじめて たなびく」。2019.2.23~3.24。
トーキョーアーツアンドスペース本郷。

2019年3月23日。

 駅から、また迷った。この施設は、名前が変わって、確かアウトサイドアートの場所になると聞いていたのだけど、現在の展示は、以前の名前が違う時と、同じなのでは、という印象だった。

 

 以前よりも、建物が古さだけでなく、いろいろな装飾などもあって、魅力的な建物だと思った。1階は、佐藤雅晴。余命を宣告されている、というステートメントで、8年ほどガンで闘病されてきたとはいえ、淡々とした文章で、そして、おそらくは最後の作品らしい。「福島尾行」。福島を訪れて、それを撮影し、一部をアニメーション化するという、でも不思議に静かなきれいな映像に感じた。近くでピアノが自動演奏で音楽を奏で続けている。別の場所で、作者のインタビュー映像を見て、福島のことは、駅のそばにフレコンパックが積み上げられていることを知って、それを見てみたい、が最初だった、ということで、それは作品にも映っていて、確かに電車の窓の、本当にそばに積み上がっていた。こういうことさえ知らなかった。3月、この展示の途中に亡くなったということを告げる知らせもあった。小さい画面として、雪やコーヒーがあり、微妙な変化をするアニメーションがあって、心が穏やかになっていく作品だった。

 

 映像作品で、今回、見ようというきっかけを作ってもらった作家は、見るのに時間もかかるので、先に3階へ行った。西村有。見たら、あ、見たことがあるのがすぐに分かった。あざみ野で見た。ちょっとかすれているような、微妙に不安定な、でも、家に飾りたいようなキュートな魅力もある絵だった。それが一定していて、日常をもう一度見直してみたい、といったことを、ちょっと思わせてくれる作品だった。

 

 2階に戻る。吉開菜央(よしがい なお)。今回のきっかけを作ってもらった作家。Wheel music 。自転車の映画、6年ほど撮っているそうだ。3つめの作品。ハムスターを展示?している歯医者など、日常の違和感を品よく撮影されているし、河川敷の景色は、どこかで見たような、いつも見ているような光景が、たとえば野球をしている子供たちの様子が、とても静かで美しく見える。自転車に乗っているので、時々、気持ちのいいスピード感もあって、3つの画面で、文字もあって、あきないテンポがあって、気持ちもよかった。

 

《静坐社》。岡田式静坐法、というものがあって、それが京都に建物があり、取り壊される前に、撮影された作品だった。細やかでまっすぐな視線。よくみえている、というのは分かるのだけど、それが自慢でなく、開かれた映像に見える。体に気持ちのいいテンポを感じ、それは舞踏学専攻も関係あるのかな、ともこじつけかもしれないが、そんな感じもした。

 充実感があった。見に来てよかった。

 

(2019年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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