アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「給水塔と赤い屋根展」。2013.11.30~12.4。Hasu no hana。

「給水塔と赤い屋根展」。2013.11.30~12.4。Hasu no hana。

2013年11月30日。

 

 阿佐ヶ谷住宅、という場所があった、と聞いた。

 団地、というには、どうやらもう少しおしゃれなところのようだった。写真で見たら、赤い屋根の団地は少し可愛くて、そして給水塔がとっくり型でそそりたっている光景は新鮮だった。私にとって集合住宅の水は、それぞれの棟の上に四角の金属の入れ物があり、そこまで水をあげて、そこから各戸へ水がいく、というスタイルだったという記憶しかない。

 

 今日から、その阿佐ヶ谷住宅、という団地をテーマにした展覧会を地元のギャラリーでやってくれる。それは、他の場所でやっていて、その写真を見て、見たいなあ、と思っていたからそれを巡回展でやってくれることになって、楽しみにしていた。

 

 行ったら、入り口のガラスに模型が並んでいた。それは焼き物で出来ているらしく、その広い敷地まで再現されているみたいで、魅力的な立体になっていた。電灯もつくらしい。
 
 中には写真が並んでいる。スナップ写真というような趣だけど、撮っている人が好きで撮影しているのが伝わって来て、それは自分の記憶などと重なって、すごく気になるものばかりに思えた。焼き物のようなブローチもよかったし、毎日撮影していた給水塔のスライドもなんだか魅力的だった。52棟も並んでいて、公園のようなものもあって、そして近所の人も含めて、60人くらいのアンケートを集めて、それを小さい紙にして書いてあって、地図のそれぞれの場所にはってあるというような作品もあった。手ぬぐいとか、いろいろな小さい商品があることで、かなり独特の空間になっていて、そこに阿佐ヶ谷住宅の中の植物を乾かして、それ

を材料として万華鏡を作る、という商品もあった。妻は、その万華鏡を作るのに、植物の材料を選んで、入れてから戻したりもして、熱心に作っていた。完成したら軽く飛びはねるくらいで、周囲からわりと温かい笑いを受けていた。私も赤い屋根の住宅のブローチ「52」という番号が入ったものを買ってもらった。

 

 思ったよりも楽しかったのは、自分が団地とは違うけれど、社宅に育ったせいかもしれない。そういう記憶がかなりあれこれと思い浮かび、中でも、作品の中の言葉から、自分も小さい頃に、ここが遊ぶところです、と指定されているところだけでなく、建物のすき間とか小さい山を切開いて作った団地だったから、思わず生まれている変な場所などをうろうろして遊んでいたのも久しぶりに強く思い出したりもした。
 
 
 
(2013年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。