アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

マシュー・バーニー「クレマスター」1〜5。2017.11.25~26。東京都写真美術館。

マシュー・バーニー「クレマスター」1〜5。
2017年11月25日〜26日。東京都写真美術館

 「クレマスター」という映像作品の存在を知ったのは、20年くらい前のことで、写真としてその一部を見たことが何度もあって、だけど、全体を見たことはなかったし、上映についても、作家本人が定めたルールがあって、全部を見るのが難しいらしく、自分の中では、もう伝説だった。

 

 たぶん見ることが出来ないだろう。それが、日本でも見られると知ったのは、何カ月か前で、申し込もうと思ったら、その日のうちに、まだ数時間しかたってないのに、5本あるのに、すべてが満席になっていた。あっさりとあきらめた。

 

 それが、そこから何週間かたったら、キャンセルが出たのか、機械の都合なのか、また申し込めるようになったけど、その時点で3席とか、場合によっては1席だけだったので、ちょっと悩んで、全部申し込んで、お金も払った。最初の「クレマスター1」だけは、妻と一緒に見ることにした。一本あたり、1000円から、「クレマスター3」は3時間だから、1900円。全部で、7000円くらいになったのだけど、そして、こういうことにお金を使うのか、といった気持ちにもなったのだけど、まさか生きているうちに見られるとは思わなかったので、それはちょっとうれしかった。

 

2017年11月25日。

 初日。妻と一緒に恵比寿から歩く。久しぶりのガーデンプレイス。駅から、相変わらず遠い。映画館ではなく、美術館で見かけるような人々。さらに、お金を持っていそうな感じがする。アートは金持ちのためのものだから、こういう中では、私のように貧乏というだけで少数派なのかもしれない。
 

 「クレマスター1」。フットボールのフィールドと、飛行船2台を飛ばし、人もたくさん使って、何しろ、ぜいたくな作り方。内容は、おそらくは本人の妄想に近い、欲望に忠実なのだろうな、というような、だけど、これだけゴージャスに現実化するのは、特に20年くらい前だから、CGも使えないぶんだけ、お金もかかったよな、と余分なことも考えたが、思ったより面白く見る事ができた。

 妻も、そんなにつまらない、ということもなく、だけど、ここで解散して、先に帰ってもらって、義母の迎えもお願いすることになる。

 

「クレマスター2」。どこまでがリアルな映像かも分からないが、2の方が、殺したり、死んだり、セックスしたりと、欲望に忠実になってくるし、変態臭も強い。気持ちも悪いけど、やっぱりよく映像化した、と思ったりもした。

 

2017年11月26日。

 翌日、「クレマスター3」。長い。そして、あれこれ、きちんと気持ちが悪いし、クルマを破壊するのも、本当にまだやるのか、というくらい壊し続けていて、ちょっと恐いというか、気持ちいいよりも、まだやるのか、というような気持ちにもなり、時々、寝てしまったが、後半、グッゲンハイムの美術館を、本当に好きに使った感じとか、壁を本人が登って行くのは、身体能力も高いし、確か医学も学んでいるし、フットボールの推薦的なこともあったし、何でもできて、アートを選んだのは、それを元に好きに出来る、ということなのかもしれないが、舞台の場所がでかいし、映像の質は高いし、なんだかすごい。

 

「クレマスター4」。これが最初の作品らしく、途中、映像的にあんまりだ、みたいなところもあったが、どうしてこういう映像がイメージできるんだろうとも思ったが、もしかしたら夢を形にしているところが多いのかも、と思い、だけど、こんな夢見ているって、どれだけ変態なんだと思った。3も思ったけど、強い映像と強いエピソードらしきものも、よく分からないまま、どんどん過去になっていく。クレマスター、というタイトルに、妙に忠実だったりする場面があって、変におかしい。

 

「クレマスター5」。オペラがずっと流れている作品。最後は、A−8。一番前のほぼ正面。今回は、売り切れ間近で、一番後ろが、妻と一緒に見たDで、あとはBとAばかりだった。隣に座った男性が、開始5分くらいで寝ている。自分も、ここまで何度も寝ていたら責められないけど、いびきが聞こえる。映像の歌と、両方が聞こえる。途中、静かな場面のときは、いびきがやんだ。何らかのパフォーマンスのようだった。

 見た。

 つかれたりもしたけど、でも、見ている時に、世界に対しての見方が、妙に黒い感じになっていた。それだけ影響されたのだと思った。

 

 

(2017年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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