アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「サウダーヂ」。2012.2.6。横浜ジャック&ベティ。

映画「サウダーヂ」。2012.2.6。横浜ジャック&ベティ。

2012年2月6日。

 最近、よく聞くようになったライムスターの宇多丸の「シネマハスラー」というラジオの番組で、2011年の年間ベスト1に選ばれていたので、見たいと思っていたが、ここまでは、見逃していたので、近い場所では、最後の機会かと思い、早起きしてでても出かけたいと思った。10時半に目覚ましがなり、12時少し過ぎに映画館に着く。

 

 予告編などが流れたあと、2人の男性が食事をしているシーンが映り、この後に予告の映画のことが始まるかと思い、その場面についていろいろ考えていたりしたら、それは、もう映画が始まっていた。
 
 それぞれの人物が表立って行き詰まっている人、一見、調子が良さそうだったり、明るそうだったりしても、実は危うさと共にある人、外国から来て、日本には何もないと帰って行く人、そんな人達ばかりで、ずっと重苦しい空気が流れていて、その中で、一人の人間が人を刺して殺す、ということに及んでしまっても、それである種の解放感とか、爆発的な感じが出るわけでもなく、男女で逃げようよ、という場面も、否定され、たとえば浮気して、それが本気になっていたパターンであっても、その妻にばれて、などという展開ではなく、奥さんが怪しげな商売に関わって行く、というさらに悪い気配があるだけだ。
 

 山梨の甲府が舞台になっているが、主人公で土方をやっている人間の職場そのものがなくなっていって、あれこれ、本当に行き詰まりで、見ている時も、見終わった後も、自分も、これから先、本当に大丈夫なのか、大丈夫という保証は誰にもないけれど、それにしても、本当に最終的には餓死、みたいなことになるのか、というような不安がすぐそこにある、というような気持ちにもなり、約3時間、何かが起こりそうで、起こったり起こらなかったり、という時間でひたすら閉塞感…、という言葉にまとめてはダメだと思うが、先が見えないけど、毎日が過ぎていく、何も楽にもならず、よくなる感じすらなく、ダメだ、と言いつつも、それが何の慰めにもならない感じは、よく出ていた。

 

 

 

「サウダーヂ」 デジタルリマスター版

https://www.ks-cinema.com/movie/saudade10th/