2014年4月11日。
ゲンロンカフェに着いたら、まだ人が少なかった。コーヒーを頼んで、一番すみの扉に近い席にしたのは、長くなったらトイレに行くことになるから、という事だったけど、まだ歯茎か歯が痛い。本を読んで、面接のことを考えているけど、集中力が少し落ちるくらい、痛い。しばらくたって、始まる。
この二人は、この10年くらい、自分が社会と断絶したような生活を送っている時も、この二人の書くものには、難しいと思いながらも、いろいろと考えさせられ、そして、そのチャンレジする姿勢に敬意をおぼえながらも、おかげで、乗り切ってこれた、という気持ちがあり、だから、この二人の対談だったら見ないと、と思っていた。
ゲンロンカフェのホームページで、最初は少なかった参加者が多くなってきたのを見て、あわてて申し込んだ。入って来た二人を見て、椹木野衣の表情があまりにも暗いことにちょっとびっくりしたが、その印象は10年前くらいで止まっていて、今は50歳を超えている。それは仕方がないのかもしれないが、それでも話を始めて、その淡々とし過ぎている感じにびっくりし、何かを聞くと、“それは簡単には答えられない”。“その時その時に、話すでしょうね”というような誠実かもしれないけど、聴衆にとっても、拒否されているような答えしか返って来なくて、質問しようとするような気力もなくなるような感じだった。
あんな感じだったのか。今の東くらいなイメージだったのに、老いたということなのか。大学の先生を長年やっていると、話し相手の細かい言葉だけを取り上げて、そうはいっていない、みたいな事ばかりが多くなるのだろうか。おそらくはトークショーという事も意識している東が質問を始めると、警察の尋問みたいだ、というような事を言い始める。
聴いている方も、気持ちがただ狭くなって、終りそうな時に、椹木のこれからのプランを語り始めたところで、東が話にわってはいって、やっとトークショーらしくなった。でも、椹木はしきりと、この話やめませんか?と言い続けた。
あんな人だったのだろうかと思い続けた。
目の前に人がいて、聞いているのに、話すのを拒否し続けているようだった。その一方で、椹木と、ほぼ同世代の村上隆が不機嫌に攻撃的な表現を重ねていたが、それでも伝えようとしていたことを思い出した。
『椹木野衣×東浩紀 再考「悪い場所」 ゲンロンカフェ トークイベント』
https://genron-cafe.jp/event/20140411/