2013年5月23日。
映画が始まった。何をしているか分からなかったが、目が離せなかった。白いリムジンに乗った主人公が、次々といろいろな人になっていく。特殊メイクをしての演技というものだろうが、それがなぜ仕事になるのか?とか、誰がクライエントなのか?とか、そういう事は一切説明されずに、話は進んで行く。
アポは9件。という言葉が出ているから、途中から、数を数えたりもするのだけど、それが終るたびに、またリムジンに戻り、次の準備をする。何事もなかったように。途中で刺されて、死ぬんじゃないか、みたいな傷を負ったはずなのに、リムジンに乗って、次の準備をしている時は、もう何事もなかったようになっている。
映画の引用とか、いろいろとしていたみたいだし、ゴジラの音楽は分かったけど、うしろの方の観客は笑っていたから、映画的な教養があれば笑うのだろうけど、それより、ホントに夢のような、変な感じ、妙に重苦しい感じがずっと続いていて、突飛なのにシリアスな空気が流れ続けているのが不思議で、リムジンのドアが閉まるたびに、音が遮断され、急に窓の外の景色が遠ざかる感じの孤立感とか、時々、すごくつながっているようにさえ、思えた。
そして、次々といろいろな人になって、途中では、急に平凡な父親になったりして、そういえば、この場合は、誰が頼んだのだろう?とか途中で、人を撃ち殺して、自分も撃たれたはずなのに、次にすぐに立ち上がれたりとか、説明はすっとばして、でも、何かが起こっても続いていく。
かつての夫婦とも思えるような女性とあったが、それもなんだか、その女性が飛び降りて、死んでいるかも分からない感じで、そのまま過ぎ去り、最後は自宅だが、最初の始まりの時の自宅とは違い、映画の引用とか、いろいろありそうだけど、それより、どうして、こんないろいろな事を、細部の感じを思いつくのだろうか、みたいな事を思っているうちに、その自宅にはチンパンジーの妻がいたりする。えー、という感じで、コントかよ、と思ったが、それは大島渚監督へのオマージュらしい、ということが帰ってから分かったりもしたが、それで終るかと思ったら、リムジンが集まってくる場所が、ホーリーモーターズというところで、そして、運転手だった女性も仮面をつけたりもして、終わりかと思ったら、最後はリムジンがしゃべり始めて、終った。
なんだか分かんないけど、すごいものを見た。この映画を見ている時にしか味わえない感じがした。
この監督は、寡作で、この前の映画が1999年で、13年ぶりの帰還になるというのを知った。私は、1999年から仕事をしてない。今年から始められたら、13年ぶりの帰還という意味では一緒で、それだけのブランクがあっても、これだけのものを撮れるすごさがある人と比べてはいけないけど、でも、縁起がいいと思った。
がんばろう、と思えた。