アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

開沼博×西田亮介。『若者が働けない社会—気鋭の社会学者による「未来の変え方」徹底討論』。2014.9.11。ゲンロンカフェ。

開沼博×西田亮介。『若者が働けない社会』

https://genron-cafe.jp/event/20140911/

 

 

2014年9月11日。

 開沼氏は、修士論文を元にした福島原発の本を読んで、この人学者で、こんなに書けるんだ、と驚きと共に、筋が通ったことでもあり、こういうことを20代前半の人間が調査して書いて来た、ということにすごいと思い、こうやって修士論文が本になるんだ、という面での励みにもなった。その後の本も日本の変わらなさ、というテーマは正しいと思って、そして、当事者であることで非難もされて、というような事を読んで、参考にもなった。西田亮介という人は、知らなかった。ただ働けない若者 無業社会の著者、ということで、これは自分の仕事にも関わってくるのではないか、と思い、久しぶりにゲンロンカフェに行った。

 

 すでに二人は前にいた。

 何かをしゃべっている。吉田調書、と言っていた。あとで、このトークショーの間に、朝日新聞の社長が謝罪会見をしていたことを知って、本当に何かの転換点が来ているのかもしれないが、今の自分は極端に無力でもある。50代を過ぎているのに、何も蓄積がなく、かといって若くもない。何者でもないどころか、何者でないまま老人になっていく、という悲しさ。自分でも哀れさを越しているような気もするが、無業、働けない、ということに関しては、自分自身も関係がありすぎて、恐い。だけど、知っておきたいのは、もう少し冷静な見方が出来る人達の話を聞いておきたいとも思ったりしたので、聞きに来たのは、やっぱり環境を少しでも変えないと、自分が老いていくばかりではないか、というような恐怖もある。一昨日は、介護をしている義母が寝なかった。地獄みたいだった。

 

 二人の話は、同世代という話題でスタートしたが、自己紹介みたいな内容は、学者はやっぱり道筋が決まっていて、かなり決まった人々で、その中の人脈でやっているんだな、というようなある意味での息苦しさみたいなものを感じたが、どこもそうなんだ、みたいな気持ちもした。

 

 そのあとも、そういう会話が続いて、学者も大変なんだ、とか、不自由なんだ、みたいな話が続き、なかなか、未来の変え方、というような話題にはならない。

 

 2000年代の最初の頃に若い時代を過ごすと、何かをしないと生き残って行けないのではないか、というような危機感があったとか、あとはその頃にドリームゲートプロジェクトという企画が政府がらみであって、その時の1人が与沢翼、というのは初めて知った。

 

 それから、いろいろな話があったものの、未来の変え方、というような話にはならないまま、終るのかな、と思ったら、東が質問したり話に入って来たりして、そんな話題になった。そして、二人は原発の再稼働・新設に関しても、やむなし、という立場だと語ったり、最近、海外からの視点を意識しないのが恐い、というような東の発言に対して、微妙にずらす反応をしているのを見て、勝手にがっかりもしたが、開沼氏に関しては、おそらくは現場から伝える、というような立場で重要性みたいなものを増していくのだろうけど、でも、西田氏の率直さみたいなものに興味は持ったので、これ以降、著書も読むようになった。

 

 東氏の指摘した、この世代が大量に出て来て、という感じは、新人類世代のある対談に似てしまう可能性があるでは、という指摘には、正面からは、答えていなかった。

 

 新人類という言い方は世代をマーケットとして初めて表現されたから、何も共通点がないのも当然かもしれないが、この二人の世代も、そういう風になってしまうんではないか、というような危惧はけっこう当たる可能性もあるかも、という気持ちにもなった。そして、吉田調書問題は、新聞そのものへの信頼が崩れ、そして、何も信じられない時代が長く続くのでは、という指摘は本当かもとも思った。延長戦になってから、面白くなった。終ったのは午後10時半を超えていた。3時間半の時間だった。

 

 翌日、東氏のツイッターを見て、この二人ともが、原発の新設もやむなし、と言っていたのがショックだったという事は、観客として、私もそう思ったことを思い出した。

 

 

 

『ゲンロンカフェ』

https://genron-cafe.jp/

 

 

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