『ザハ・ハディド全仕事』
幅が約22センチで、縦がだいたい25センチ。320ページ。大きくて、手に持つと、ずっしりと重い。
写真が多く、世界にあるさまざまな建築物。その案だけのもの。オブジェ、インテリア、家具なども網羅されている。
「アンビルドの女王」といわれたザハ・ハディドという建築家が、こんなに幅広くデザインし、設計しているとは知らなかったし、日本にも作品がすでにあるのも、恥ずかしながら、まったく情報に触れたこともなかった。
モンスーン・レストラン 日本、札幌 1989―1990年
バーの上のらせん形は1階の天井を突き抜け、圧力容器から噴出する炎の竜巻さながらに渦を巻いて上階のドーム表面に達する。
大阪フォリー、EXPO90
複数の壁をまとめたりねじったり
そして、こうした書籍でも、ザハ・ハディドの仕事の中では、やはり、建築物が圧倒的に印象に残る。
ヴィトラ社消防署 ドイツ、ヴァイル・アム・ライン
1990-94年
この建物のそばを通りかかったとしたら、消防署には思えない気がする。写真で見ただけでも、先鋭的な美術館に思える。
シュピッテラウ高架橋
オーストリア、ウィーン 1994-2005年
実用的な建築物のはずなのに、構造的には無理が加わっていて、建築物上部の方が重そうで、実際には完全に安全性が保たれているはずでも、ちょっと動きそうにさえ見える。
園芸展示会のための建物。これは、植物に関するイベントのためのもののせいか、建築物そのものが川の流れをかたちにしたようにさえ見える角度がある。
MAXXI国立21世紀美術館
イタリア、ローマ 1998-2009年
上空からの写真が掲載されているが、街の中に巨大な生物がたたずんでいるようにさえ見える。
アニメの傑作「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する得体の知れない「敵」である「シト」が山頂に現れたように思える写真だった。
フェーノ科学センター
ドイツ、ヴォルフスプルク 2000-05年 (共同プロジェクト)
フェーノ科学センターは、ドイツではそれまでに類をみない施設であり、来場者を幾らかの複雑さと未知の領域に向き合わせることを目的としている。
この表現が大げさでないのがすごい。とはいっても実際に行ったことがないから、断言してはいけないのかもしれないけれど、でも、やってきた人を、「複雑さと未知の領域に向き合わせることを目的」にできること自体がすごいし、この企画が通ったことにも、ちょっとした驚きと共に、自由の気配もして、この建築物がある場所がちょっとうらやましいような思いにさえなる。
ピエールヴィーヴ
フランス、モンペリエ 2002-12年
これは、公文書館。図書館。およびスポーツ施設を収容する公共の複合施設。写真で見ただけだけど、巨大な異物。複雑で、なんだかわからない形。でも、かっこよくて美しい。
広州大劇院
中国、広州 2003-10年
侵食によって角の取れた小石のように、河岸の立地と完ぺきに調和して建つ。
写真では、調和しているようには見えないけれど、でも、確かに、川のそばにあると、すごく馴染んでいる巨大な石に見えるかもしれない。もう少し隙間があったら龍安寺の石庭の石のようにさえ感じる。
中国には、もう一つ、上海に『凌空SOHO』というオフィスと商業施設の大きい建築物がある。曲線というだけではなく、メビウスの輪のようにさえ思える。ザハ・ハディドの設計した大きな建築物が二つもあるところに、より国の勢いを感じさせる。
東大門デザインプラザ
韓国、ソウル 2007-14年
そして、韓国にも巨大なキノコのような有機的な建築物がある。あちこちに曲線があって、怖いほど、すごい。こんな場所があるだけで、そこにいる人は、多分意識が違ってくるはずだと思える。
ロンドン・アクアティクス・センター
イギリス、ロンドン 2005-11年
これは、2012年ロンドンオリンピックのメイン会場の一つ。プールがある。だから、流線型。だけど、巨大な唇にも見える。こんなすごい建築物とは知らなかった。生き物のようだ。
オリンピックで、こうした建築が残されるのならば悪くないと思うのと同時に、東京オリンピックのとき、いろいろなことは納得がいかなかったものの、せめて国立競技場がザハ・ハディドの設計だったら、などと思う。
この本の中には、建築前のデザインと、その案が実現し、実際に街などに立っている写真の両方が載っているものもある。
それを比べると、デザイン案よりも実物の方が、圧倒的に異物感が増しているように見える。平面に収められているときよりも、3次元に現れたときの方が、その曲線のあり方や、大きさに凄みがあるように感じる。
自分自身は建築に関しては、素人なのだけど、それでも、本当に建築家といえる人だったからではないか、などと思ってしまった。
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