アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

MOTコレクション。特集展示『横尾忠則 水のように』。2023.12.10~2024.3.10。東京都現代美術館。

特集展示『横尾忠則 水のように』。2023.12.10~2024.3.10。東京都現代美術館

2024年3月10日。

 東京都現代美術館の常設展は、ここ何年か充実していることが多い。

 1階は「歩く、赴く、移動する」をテーマにし、それまで見た記憶がないような作品も多く新鮮だった。

 そのあと、3階に上がる。

 展示室に入ると、サム・フランシスの作品が並んでいる。

 とても大きく、空白が広すぎると思っていた作品が、壁一面に広がるように設置されていて、そこにはベンチもあるから、時間があればもっとゆっくりとしたいくらいだけど、やっぱり気持ちがよかった。

 そして、こうした作品は、何枚も、広くて天井が高い空間にあってこそ、力を発揮するように今回も思えた。

 

 そのあとの展示室には「横尾忠則のゆかりの作家たち」というテーマで作品が並んでいる。

 こうした「ゆかり」というくくりで、紹介される場合は、かなり強引なことも多いのだけど、横尾忠則は、長く現役で積極的に作品を制作し続けていることもあって、本当にいろいろなアーティストと関わりがあることを改めて知ったりもする。

 

 ジェニファー・バートレットという作家は、初めて知った。

 重く強い色合いで、力強く描かれた絵画。それと呼応するようなざっくりとした立体がそばにあって、何とも言えない広がりを感じた。

 そして、こういう場所で、知らない作家を知ることができたのも、収穫だった。

 

 横尾忠則は、「水のように」というテーマで、また特集展示がされていた。

 この20年間でも、横尾忠則の作品は、あちこちで見てきた。昔のスター・デザイナーでもあったことは知っていたし、ポスターも有名だし、それは過去の作品ではあったけれど、新鮮だったし、何より横尾は、この時間も現役で、しかも、新しい作品を文字通り次々と大量に制作していたから、新作も見ることができてきた。

 もちろん、その作品は、いつも一目見て「あ、横尾忠則だ」と分かる作風は同じだったのだけど、次々と違うことをテーマにしていて、だから、いつも新鮮に感じた。年齢のことを語るのは失礼だとは思うけれど、80代後半で、観客も次の作品へ期待させるのはすごいことだと改めて思う。

 今回の特集展示も見たことがある作品と、見たことがないかもしれない作品が混在していて、それも時代も結構バラバラだったはずなのだけど、横尾作品としての統一感はあった。

 何だかすごい。

 

常設展

 3階の最後の展示室には、いつも宮島達男の作品がある。

 壁を覆うような大きさのボードに、無数のカウンターが設置されている。

 それは、少し遠くから見ると。星の瞬きようにも思えるけれど、それぞれのカウンターは、9から1までを繰り返し、0のときには、ただ暗くなるから、黒に見える。

 そのそれぞれのカウンターの数字が変化していく速度も違うから、とても早く変わっていくところと、なかなか次の数字にいかない場所もある。全体をぼんやりと見ていると、ちょっと眠くなるような感じにもなるし、そうやって、個々のカウンターに注目すると、その違いが気になってもくる。

 

 常設展も、大体が企画展に合わせて、会期が決まっているから、今回、こうして紹介してきた展示も、おそらく全く同じように作品が並べられることはないはずだ。

 だから、終わってしまった展示を書いても、それを読んでもらって、興味を持ってくれた場合にも、もう同じ展示を見ることはできない、と思う。

 それでも、東京都現代美術館の常設展示は、これからも収蔵作品は増えていくはずだし、そして、今回も、前回も期待を裏切らない新鮮な展示をしてくれたので、まだ見ていないことに対して何かいうのは難しいとしても、次の常設展も、きっと、いつも同じではなくて、テーマを掲げて、まるで企画展のような展示が見られると思う。

 

 そして、常設展の最後に、宮島達男の作品があるのは、おそらく変わらないのは、かなり巨大で重量もありそうで、場所を変えるだけでも大変そうだからだけど、変化のある常設展の後に、いつも同じ作品が見られる気持ちよさは感じるので、ずっと、この場所にあることも嬉しいように思う。

 

 

『GENKYO 横尾忠則

https://amzn.to/3Ji0sFK