2019年11月20日。
多和田葉子の書いた短い物語を元に作品にした展覧会。もやがかかったような、どこかちょっと距離があるような世界が描かれていて、それは文章でも、銅版画でも同じような距離感が不思議でもある。
版画の独特の引っ掻き傷のようなありかたは、他では見られないから、それは、独特の世界といっていいもので、おおかみが、見たことがないからよけいに、確かにいたはずなのに、いないような生き物に思えてきて、そして、印刷までさせてもらった。それは、東日本大震災の時に被災した印刷工場から持ってきた活字を使っていると聞いた。他にも、作家が書いた短い小説が、現実感と非現実感の距離が、うめあわせる作業をしてないせいか、時々、ふっと気が遠くなって眠くなるような、読んでいる時の時間の流れはゆっくりになるような、そんな無造作な力を感じた。
(2019年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。