アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」。2024.5.17~6.29。ワコウ・ワークス・オブ・アート(六本木)。

2024年6月1日。

 この「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」という、とても強くて、しばらく忘れられないような言葉は詩の冒頭だった。
 

https://www.wako-art.jp/exhibitions/ifimustdieyoumustlive/

ワコウ・ワークス・オブ・アート

 

 そういう詩が存在することを、この展覧会で初めて知った。

 

 こんな直接的で強い言葉のタイトルの展覧会は珍しく、だけど、とても印象に残るから、さまざまな展覧会を紹介するサイトでも目にとまる。内容を知ると、何も知らないような自分が行ってもいいのだろうかといった気持ちにもなる。
 

https://bijutsutecho.com/exhibitions/13615

(「美術手帖」サイト)

 

本展のタイトルは、パレスチナの詩人、リフアト・アルアライール(1979〜2023)が最後にSNSに投稿した詩の冒頭部分である。この詩を投稿した翌月、アルアライールイスラエル軍空爆により絶命した。アルアライールが最後に残したこの詩が、本展全体に通底するメッセージとなっている。

                            (『美術手帖』サイトより)

 

 だけど、やはり行こうと考え直し、六本木に向かい、ビルの階段を上がり会場に入ると、思った以上に人が多く、だけど、静かな空間だった。

 

 本展では、フィシュの新作を含む彫刻作品やドローイング、ムスアブ・アブートーハ(1992〜)の詩、画家 スライマーン・マンスール(1947〜)の版画、ガザのためにアーティストたちが制作したポスター(Posters for Gaza)を中心に紹介。 また、長年フィシュと親交があり、今回の企画の意図に賛同した奈良美智(1959〜)の新作も展示される。

                           (『美術手帖』サイトより)

 

 どうしても奈良美智の作品がすぐに目に入ってしまうのは、これまで見てきた作家だから、というのもあるけれど、このギャラリーのそれほど広くない空間には、ポスターがあり、版画があり、ドローイングも、絵画もある。

 パレスチナ出身のアーティストや詩人に関しては、失礼かもしれないけれど、ほぼ知らなかった。もしかしたら、ガザ侵攻がなければ、こうした作品に触れることもなかったかもしれない。

 作品も、静かで、でも力も感じて、さらにいろいろなことを思ったのは、その背景を考えてしまうからで、こうした大きな出来事に対して、自分は何もできないし、していない、といった後ろめたさもあったけれど、その会場にある詩や言葉は、ただ、他の場所で読むよりも、こうして作品に囲まれている中で接したことで、知らない人であるのに、そこで話されているように感じるから、しばらく自分の中に残るような気がする。

 何かを言えない。

 そんな気持ちになるが、いったん出て、他のギャラリーを見てから、再び、この空間に来る。少しとどまる。

 整えられたハンドアウトもありがたくいただく。そこには言葉があった。

 ギャラリーにあった本も読んでみようと思った。自分は、本当に何も知らないことを知る。

 

 

 

 

(『ホロコーストからガザへ』 サラ・ロイ)

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