アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

書籍 『コンクリート魂  浅野祥雲大全』 大竹俊之

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 小学生の頃、中部地方に住んでいた。

 そのとき、何度か家族でドライブで行った場所が、『桃太郎神社』だった。

 そこに犬、キジ、猿、桃太郎、だけではなく、鬼の銅像もあったが、それが不思議な佇まいだったのは印象に残っている。

 それから、何十年か経って、浅野捷雲という無数のコンクリート像を作った人の「作品」であることを知った。

 

浅野祥雲三大聖地〟のひとつ。おとぎ話・桃太郎の名場面をカラフルなコンクリート像が活き活きと表現する。境内を彩る祥雲作品は30体。制作は昭和26年から44年まで段階的に進められた。 

 しかも、この神社の事情まで知ることになった。

境内には祥雲以外の作品も10体以上混在している。宝物を掲げる赤鬼青鬼や餅つきをするお爺さんお婆さんなど、明らかに造形が稚拙な作品も祥雲作品と見なされ、〝浅野祥雲=ヘタ〟という誤ったイメージの原因にもなってしまっている。

 

開創は昭和5年。全国各所にある桃太郎ゆかりの地の中で唯一、神社本庁承認で「桃太郎神社」を正式名称とする。

 

宝物館には鬼のミイラ、鬼の珍宝、桃太郎が生まれた桃の化石(平成8年の小火で焼失してしまい写真のみ)などを展示し、ツッコミどころ満載の神社としてB級スポットマニアに愛されている。

 

日本ラインと呼ばれる。昭和6年には文部大臣から名勝の指定を受け、犬山市の観光の目玉ルートとして開発が進められていて、桃太郎神社もその一角を担う名所のひとつとして整備された。祥雲作品は国のお墨付きの名所に花を添えるものとして作られたのである。

 

 さらに、他の場所にも、その作品があることを、この書籍で初めて知った。

 

祥雲は名古屋を拠点に昭和初期から40年代にかけて無数のコンクリート像をつくった明治生まれの造形家である。五色園(愛知県日進市)、桃太郎神社(愛知県犬山市)、関ヶ原ウォーランド岐阜県関ヶ原町)が手がけた代表的な施設。

 

 こうして本にしてもらって、こうした独特な人のことを知ることができた。