小学生の頃、中部地方に住んでいた。
そのとき、何度か家族でドライブで行った場所が、『桃太郎神社』だった。
そこに犬、キジ、猿、桃太郎、だけではなく、鬼の銅像もあったが、それが不思議な佇まいだったのは印象に残っている。
それから、何十年か経って、浅野捷雲という無数のコンクリート像を作った人の「作品」であることを知った。
しかも、この神社の事情まで知ることになった。
境内には祥雲以外の作品も10体以上混在している。宝物を掲げる赤鬼青鬼や餅つきをするお爺さんお婆さんなど、明らかに造形が稚拙な作品も祥雲作品と見なされ、〝浅野祥雲=ヘタ〟という誤ったイメージの原因にもなってしまっている。
開創は昭和5年。全国各所にある桃太郎ゆかりの地の中で唯一、神社本庁承認で「桃太郎神社」を正式名称とする。
宝物館には鬼のミイラ、鬼の珍宝、桃太郎が生まれた桃の化石(平成8年の小火で焼失してしまい写真のみ)などを展示し、ツッコミどころ満載の神社としてB級スポットマニアに愛されている。
さらに、他の場所にも、その作品があることを、この書籍で初めて知った。
こうして本にしてもらって、こうした独特な人のことを知ることができた。