アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「教育と愛国」上映&トーク。2023.2.23。立教大学。

映画「教育と愛国」上映&トーク。2023.2.23。立教大学

 ラジオから「教育と愛国」という言葉が聞こえてきて、映画を上映すると知った。

 

 それは、立教大学での催しで、社会学部のゼミが主催しているらしいと知り、トークもあることも聞こえてきた。本来は、大学という場所は、社会に対して開いている場所、というようなことを思い出し、その機能を果たしてもらっていることにもありがたい気持ちにもなって、やっぱり行きたいと思った。

 

『公開映画上映会「映画「教育と愛国」上映&トーク

https://www.rikkyo.ac.jp/events/2023/02/mknpps00000243ga.html

 

 映画館よりも安く、こうした催しは確か「資料代」という名目になるはずだけど、1000円ということだから、さらにありがたかった。

 

 サイトから申し込んで、コンビニで払うから、さらに手数料的なものもかかるけれど、それでも、1220円だった。

 

 映画だけではなく、そのことに関してのトークも一緒のイベント(大学内で行うから、そういう言い方ではないからもしれないけれど)に出るのは、本当に久しぶりで、それだけで、ちょっとうれしかった。

 

 当日は、祝日だから、それほど電車が混んでいないと思い、それも出かけたいポイントになっていたが、久しぶりに乗った東横線は、かなり人がたくさんいた。もう少し人が増えたら、満員電車になりそうで、それも、普段乗っている路線とは違って、マスクをしていない人も何人もいて、それは仕方がないのかもしれないけれど、家族に持病を抱えている人間もいるから、感染しないようにしている人間にとっては、やっぱり怖かった。

 

 渋谷を過ぎたら、そのまま地下鉄になるのだけど、急に人が減って、ゆとりを持って座れるくらいになった。だから、窓を少し開けると、風が入ってきて、ちょっと気持ちが安心した。

 池袋で降りて、地下鉄の通路を上がって、少し歩くと、キャンパスらしい建物が見えてきて、それが立教大学だった。池袋にあるのに、門の中は、イメージの中の大学として、勝手におしゃれで、居心地も良さそうな場所に見える。

 その中をしばらく歩くと、目指す14号館だったけど、こうしたキャンパスに来るたびに、なんだか、うらやましい気持ちになる。

 

映画上映

 

 まだ開場までには時間があって、それなのに、想像以上に人がたくさん来ていた。会場は、大きめの教室のようで、そして、上映時刻が近づくと、完全に満席になっていたと思う。

 ほぼ予定通り、午後1時に映画が始まる。

 

 内容は、本を読んで知っていたはずなのに、実際に、活字ではなく、人が話をしている映像は、やっぱり印象が強かった。

 だから、場合によっては、嫌悪感のようなものが反射的に出てきてしまうような口調や、何より表情をする人もいて、文章だけで読むよりも、当たり前だけど、どんな人なのか、が話している内容以上に伝わってきたように思う。

 そして、書籍化の時よりも、さらに改めて、新しい取材も加わっているし、そうした教育現場で、制限がありながらも、より良い教育を目指そうとしている人たちの存在も知った。

 それにしても、戦後70年以上も、戦争の反省を元に守られてきた様々な原則が、この20年足らずで、こんなに崩れるように変わってしまうことは、やはり怖かった。

 

トーク

 

 上映後、ナビゲーターとして砂川裕慶・立教大学社会学部教授が務め、この映画の斉加尚代監督と、さらには、現役の小学校教諭の方が、ゲストとしてトークをする時間になった。

 映画の内容だけで、なんだか改めて怖いのに、実際の教育の現場は、現在進行形で、こわさが増しているようなエピソードがいくつも出てきた。

 

 学校では、「平和」という言葉が使いにくくなっている。平和憲法、というような言葉でも、政治的な意味があるなどと言われてしまう。

 

 職員会議も、話し合いではなく、校長の意思を伝えるような場になっている。

 

 道徳が教科になったけれど、そこに通底するのが、自己責任論のように見える。

 

 今は、とにかくルールを守れ、和を乱すな、という教育になっていて、そのルールが本当に妥当なのか、と検討するような発想は尊重されないこと。

 

 そういった教育のためなのか、大学生が、自分の意見を言うことに慣れていないように見える。周りに合わせることばかりが、体に染み付いているのではないか。

 

 社会の先生が、社会のことを語れなくなっている。政治的公平性、といったことばかりを言われ過ぎて、投票に行ってもいいんでしょうか?という質問が若い教師から出るくらいになっている。

 

 もう、そこまで来ているのだろうか、とちょっと絶望的な気持ちになるが、こうして、現実を伝えてくれること自体が貴重なのは間違いないかった。

 

 

 

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