アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

書籍 『戦争画とニッポン』 椹木野衣×会田誠

戦争画とニッポン』 椹木野衣×会田誠

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 戦争画は、美術館に所蔵されているのに、見る機会は極端に少ない。

 会田誠は、現代美術界の中でも、戦争画に対して、関心を持ち続け、作品としても制作しているアーティストで、椹木野衣は、特に現代美術に関して書き続け、新鮮な視点を示してくれている批評家で、その二人が関わっている書籍というので、読んだ。

 

 戦争画のありかたは、思った以上に複雑な要素があったし、戦時中の雑誌の対談の再録もされているのだけど、藤田嗣治が、ものすごくシンプルな戦意高揚をくり返し語っているのが、想像以上だったけど、こういう時は気持ちが高揚していて、ある意味では生きがいを感じているのだろうとは思った。
 
 椹木野衣が、戦争画に対して、こうした指摘をしている。

はっきりしているのは、自分たちが作り出しているものの本当の意味は、つねに、事後からしか明らかにならない、ということだ。

 

 会田誠が、今後「戦争画」を描くかどうかについて、こうした話をしている。

 まず、「歴史は繰り返す」といっても、まったく同じものが繰り返されるわけではないからです。時代が変わればすべての状況が一変しているし、表面的な固有名もすべて刷新されています。その中で何が本当のニューカマーで、何が繰り返しなのか、見極めるのは容易いことではありません。

 また「歴史の運命」というあまりにも大きなものに対する「個人の意志」の小ささも、日々痛感させられていることです。

 

 戦時中の雑誌での対談「南方戦線座談会」の再録も含めて、貴重な記録でもあると思う。