2016年8月20日。
初めて行くギャラリー。
会田誠のツイッターで、この展覧会に関する言葉を見て、この展覧会に対する出展者の疑問を見て、どこか誠実さみたいなものを感じ、戦争画、というテーマでもあるし見たいと思っていたのと、そういうトークをきちんとやってもらえたら、とも思ったし、その微妙であるけど危機感とかうその無さみたいなものがあるように思えたので、作品も見たいし、初めてのギャラリーだし、ほとんど知らない作家ばかりのトークも見たいし、とも思って、阿佐ケ谷で降りた。
美術家・笹山直規がキュレーターを勤め、23名の作家の作品が並ぶ。会田誠と、藤代嘘以外は自分が無知なせいもあるのだろうけど、知らない人ばかりだった。駅から歩いて、急にギャラリーがあった。
中に入ると、若い人しかいなかった。
後でプロフィールを見ると、今回のトークショーの司会も務めるアーティストが89年生まれだから、20代後半。美術の世界でいえば、こういうグループ展に出るというのは、すでにある程度の成功者ばかりということなのだろうとは思ったりもする。
会田誠は、この前見た個展の弁当箱を使ったシリーズの一品。根本敬は、いつものおじさんが出て来る絵であった。そのカラーの強さはすごいと思うし、振り返れば、根本敬の作品があったから、「時代の体温展」はより印象に残るものになったし、そのリアルさが、あの時の自分を支えてくれたのも事実なので、それからアートという世界は必要だし、見てきただけだけど、それは、自分にとっては重要なことで、今年で興味を持って20年になる。
作品は、どれがすごい、というようなことは残念ながら思わなかった。戦争画、といえば、藤田嗣治の絵だったりもして、それはすごいと言われていたが、でも、実物を見た時もよくできているけれど、リアルな感じは少なかった。今の、この目の前にある絵が、どうもあいまい、といった話を、今日の司会のアーティストがしていたのだけど、本当にリアルな戦争画は描けないのではないか、描けるような場所は、生きて帰って来れないのではないか、といったようにも思うし、戦闘がまだないとしても戦地に行って描いてきた、ということが重要なのではないか、といったことを思って、本当は戦争画といえるようなものはほぼ存在しなくて、自分の浅い知識では香月泰男が本当の戦争画といえるのだろうか、と思ったりもした。
だけど、戦争画というのは、そういうものではないから、と思ったりもして、そして考えたら「戦争画」というものは国家から発注されるものだから、民間のギャラリーで「戦争画」というテーマでやる以上、以前、本で読んだ会田誠の、“いつのまにか戦争画を描かされているかもしれない”といった内容も含めて、そういう事まで分かるような作品があったら凄いと素直に思えたのかもしれないが、トークの中で出ていたように、サブカルチャー経由の戦争のイメージばかり、とも確かに思えたが、それでも技術的には達者な感じもあった。
入り口のカウンターあたりで、ギャラリーにいるのは、アーティストか関係者しかいないような感じになっていて、その中で会話も聞こえて来る。◯◯が書いているよね、考えたら、同世代が書いているよね、ちょっと前まで松井みどりとかだったのに。その間は?いないのかな。だらしないんじゃない?
そうだったのか。などと思った。
ギャラリーの中に20席くらいのイスが並べられて、午後5時には始められた。今回のキュレーターでもある笹山氏は、自分よりも20歳も下。登壇者6人は、すべて20代のはず。まだ学生でも、美術家と名乗っていた。すごいことだと思う。
Artists Talk Vol.2
司会 : 中島晴矢 出演 : 金藤みなみ、戸泉恵徳、藤城嘘、布施琳太郎、李晶玉
こうして揃うと、かなりの人数だし、さらには、観客もいっぱいになり、立ち見が出たりもして、盛況だったと思うが、途中で、難しさというか、自分とは関係ないような気持ちになったせいか、単純に理解できないせいか、つまらなくなったのか、眠ってしまった時間もあったりしたが、2時間半の時間は、他では味わえない貴重な時間でもあったのは事実だった。
司会の中島氏が、違和感をきちんと表明し、こうして人が集まるようなことにしたのは、よかったと思ったのは、質問者の一人と同じ気持ちにもなったが、戦争画をテーマにするのだったら、確かにキュレーションの段階で、もう少し考えて、何かしらの介入があるくらいの提案があってもよかったと思えた。
質問をしていた、どうやらアートコメンテーターという人の話し方が、難しい話をするのが変な感じの人、という役割を与えられた人みたいに見えた。難しい言葉を口にする気持ち良さがあるとは思うが、それは10代である程度以上の頭の良さ、という条件があるだろうから、それよりも頭が完全に悪かった私は、そこにはまらなかったのは幸運だったのかもしれない、などとも思えた。
いろいろと個性の強い人がいた。その中でも、登壇者で在日朝鮮人の作家が、零戦をモチーフとして在学中の朝鮮大学で展示したら、「迫害されたユダヤ人が、ナチスの制服を着ているようなものだ」と怒られた、という話の貴重さ。いろいろな要素がすごく入っている事、もう一人の女性は、自分の個展のチラシも自分で配っていて、それも含めて感心もしたが、なにしろ、若い人たちの集まりなんだ、とは思ったが、参加させてもらえて、よかった。
その内容は、すでにツイッターでまとめられていた。
http://togetter.com/li/1014389
この企画で毎年やるらしいが、それがどんな時代になっても、続けられたら、すごいと思った。
(2016年の記録です。多少の加筆・修正をしています)。