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1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

しりあがり寿の現代美術「回転展」。2016.7.3~9.4。練馬区立美術館。

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しりあがり寿の現代美術「回転展」。2016.7.3~9.4。

練馬区立美術館。

2016年9月1日

 どこかのギャラリーでやっていた個展の写真を見た。大きな紙を使って、大きい作品を作っていて、それがとてもきれいで、天国だか地獄みたいな光景だった。

 

 しりあがり寿の漫画作品で、今でも少しだけ思い出すのは、死後の世界は確かにあるのだけど、そこにいられるのも限られていて、そこからまた魂は消えていくというような設定で、ものすごく理不尽というか、残酷な感じがして、このこわさがどこから来ているのかよく分からない人だった。そんなことを思っている間に、評価もさらに高まっていて、個展を、それも公立の美術館でやることを知り、東京だけでなく、関西の美術館でも回るし、その上、ここ(練馬区立美術館)は、しぶいものばかりを開催しているようなイメージもあったので、どうするんだろう、というような興味もあり、妻と出かける。

 

 以前と違って、東横線からうまくいけば一本で行けるようになっていて、だけど、途中の小竹河原という駅で乗り換えることになり、初めての駅名だけど、池袋のそばで、だけど、いろいろな線につながっているので、重要な駅になり家賃も上がっているのではないか、といった余計なことを考えていて、最寄りの駅についたら、そこからすぐに美術館があった。駅から近い美術館というのは、すごくありがたい。

 

 美術館の中は、年輩の男性と、女子高生のグループが来ていて、ちょうど作品の「地球防衛家」の構成になるのかもしれなかったが、過去のマンガの原画が飾られていた。絵がうまかったり、題材が不思議で怖かったりするのを、普通に描いている感じがして、なんでだろう、という気持ちにもなる。

 

 墨絵の大きい紙の作品は、なんだかすごかった。いつものあの絵のタッチだから一見深刻な気配がないのに、広がりと深みがあった。

 

 デジタルな動画を使った絵が、変におもしろい。女子高生のグループも、北斎のもので笑っていた。わたしたち二人は、超能力らしきおじさんが、もう独りのおじさんにその波(赤だったり、青だったり)を出していて、嫌がっている姿、みたいなものがやけにおかしく感じた。

 

 回転展は、いろいろなものを回していた。やかんとか、だるまとか。おもしろかったのは、ゴミも含めてレシートとか、下着とかも含めて回っていたり、しりあがりの過去の賞状等も回っていたりする。その膨大さが広がる光景がすごくて、そして、最後にピリオドみたいな黒い丸がただ回っていて、終わりになっていた。「こんなのは回転じゃない」と、コスプレまるだしのしりあがりがどなって、同じ映像が続くものもあって、全体としては、ふざけている、としか思えない気配が濃かったし、よく企画が通ったな、というような気持ちにもなったのだけど、なぜか見終わると、すごく疲れた。

 

 自分たちが、回転する惑星にいつもいる、というようなことを体が思い出してしまうせいだろうか、などともっともらしい話を妻として、そのロビーで持参したボトルに入ったコーヒーを飲んで、少しくつろげて、ありがたかった。

 そこでも、大きい赤いねじが2本回っていたが、短めなのは、右回りで、長めは、左回りだから、とれかかっていて長く見えるのでは、みたいな話をして、あっているかどうかも分からないのに、おお、と思った。

 しりあがり寿、という人は、その一見気楽そうな外見からは、うかがいしれない、不気味さとかがあると思ったりもしたが、そんな風に思ってしまうこと自体が、どこかワナにはまっているような気にもなってくる。

 印象がわりとあとになっても残っているのが、やっぱり少し不思議だった。

 

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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