作品として目の当たりにすると、この場所に風景があることに、納得がいくというか、これまで、どうして誰も気がつかなったのだろうか、といった気持ちになる。
網戸に刺繍糸で、「絵」が描かれている。
もし、実際に利用されたとしたら、そして、その向こうに庭があるとしたら、風景が重なるから、さらに不思議な気持ちになれるのだと思う。
そして、蚊帳が広がり、その表面にも「風景」が広がる。
『蚊帳の中に横たわり、その深い青緑色の境界線を眺めていると
渺茫たる奥行きが浮かぶ
川のこちら側にいる時、あちら側は果てしない』(作者の言葉)
『近年の立原の作品は、空間を隔てる戸でありながらも、透ける、空気や光を通す、などその境目が曖昧である「網戸」を支持体とし、刺繍糸で風景を描いていく作品を発表してきました。透過性のある網戸越しに、風景を重ねることで、そこに新たな時空の境目や奥行きを映してきました。
本展では蚊帳を用いた新作を発表いたします。その形態上これまでにはなかった領域が生まれ、それは同時に体感へと誘導し、立原のテーマである「内側と外側」「彼岸と此岸」「時間」といった風景の中の境目の在り方のテーマをより深く探って行きます』(チラシより)。
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