アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「ベルギー王立美術館展」。2006.9.12~12.10。国立西洋美術館。

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「ベルギー王立美術館展」。2006.9.12~12.10。国立西洋美術館

2006年11月30日

 

 この年は、余裕がまったくない時だった。それでも、たぶん、だからだと思うけれど、やりたい事をやっておかないと、これからどんな事があってもダメだ、と妙な気持ちになっていて、ゲイサイにも参加できたし、青森にも行った。入院している母親の外泊も3回したし、箱根にも旅行へ行った。そういえば、クラス会もあった。

 

 それでも、ヨーロッパの中世とかルネサンスとか、やっぱり興味が持てず、駅のポスターで西洋美術館などはよく張ってあったけれど、自分が見るものだとは思えなかった。でも、友人からメールをもらい、今の展覧会がスゴくよかった。ある絵の前では30分くらい見ていた。みたいなことを教えてもらったので、行ってみようと思った。

 

 ブリューゲルの作品と言われる絵は、今はいろいろな説が出てきて、誰のものか分からないらしいけれど、でも、そのイカロスの墜落は、絵の中の海にさりげなく落ちていて、その事に周りの人は気がつかず、みたいなところはカッコイイと思えたし、すみずみまできっちりと色が塗られていて、そこには迷いみたいなものもなく、絵を描いて、どうだうまいだろう?みたいな声も聞こえてきそうで、大げさにいえば幸福感みたいなものまであった。誰が描いたか分からないのは、工房みたいなところで描いたということらしいが、そういうチームとしての強さ、も出ているような気がした。

 

 他では、アンソニー・ヴァン・ダイクの絵がすごかった。

 人の目を完璧に描ける人だと思った。目に、その人が出ているのだけど、本人も気がつかない本人を、得意気ではなく、普通に(こういう場合の普通は普通ではないけれど)描けるすごみがあって、怖い画家だと思った。こういう力がある人が時々いる。

 普段ならば、絶対に見に来ない展覧会で、でも来てよかった。どの時代にも、おお、と思えるような人…ダイク…が、やっぱりいるんだ、と思った。

 

 常設展は、古い建物で、中庭があって、広くて落ち着いていて、母が、ここによく来た、という話も思い出して、なんとか、ここに、もう1回連れてこれないか?と思いながら、でも階段も多いし、エレベーターはあったっけ?みたいな気持ちになりながら、それでも、ここには少し古い感じはするけれど、不思議な落ち着き…古びた豊かさが確かにあった。

 常設展には、今だに、新しく購入した西洋の宗教画のようなものがあり、その意味合いは、やはり考えてしまう。

 

 モネの部屋があった。

 ホントに明るい絵だった。

 この人は、光の求め方が、尋常ではなく、それはたぶん生理的なものでそれをベースに描こうとしているのだから、それは似ているものは描けても、それ以上は無理だと思えた。積みワラの連作というのがあるそうで、それは、時間が違うと光が違うから、というような理由で、何枚も同じ構図で描いているもので、そういう事を本気で熱もこめて出来るような人間は、すごいと思ったし、でも、本人にしてみれば、おそらく自然なことだったのだろう、と思い、だから真似が出来そうで出来ない、ということだとも思った。

 

 上野の森は、不思議なところだった。

 時間が妙な積み重なり方をして、腐りそうで腐らず、現代に顔を出している。

 そんな感じがした。

 だから、ちょっと怖いところかもしれない。

 

 

(2006年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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