2020年10月7日。
みなとみらい駅で降りて、階段を登って、商業施設を抜けて、横浜美術館が見える。建物は作品に覆われていて、黒い建物になっている。
入り口には、モニターみたいなものがあって、その前に立つと検温がされる。こういう機械は初めてだった。そのあと消毒もして、入る。
コロナ感染予防のための、お願い事項が4つある。
マスクをしましょう。
距離をとりましょう。
手洗いしましょう。
消毒しましょう。
コロナ禍で、様々なアートイベントが中止になる中、コロナ禍後では、もっとも早いトリエンナーレということだった。
平日の12時に予約をして、でも、思った以上に人が多い。今回、入場制限のために事前予約制にしているはずで、もし、そうでなかったら、もっと「密」になるほど混雑していた、ということだったと思う。
入場する前に、正面入り口に、様々なものが大量にぶら下げられていて、入った瞬間に期待がふくらむような作品がある。ニック・ケイブ。「回転する森」。ほとんどの人が撮影をして、何枚の写真を撮っている。
展示を見て回る。
マスクをしている人しかいない、といった風景は変わっているが、いつもの横浜美術館とあまり変わらないし、小さい子供を連れた親子連れが目立ち、明るさが加えられている。
展示室を出ると大きいソファーが並んでいる。
その上に、小さいパネルが置いてあるから、感染予防のたまに、座れないのか、と思って、よく見たら、それはアンケートを呼びかけるQRコードの告知だった。
スタッフが多いように思う。黒いスーツにマスクは、意外と合っているように感じる。
現在のトリエンナーレだから、今回も映像作品が多い。作品によっては、どちらかといえば、少し「密」になりそうになり、少し距離をとろうしていたら、展示の都合もあるので、前をおつめください、とスタッフに促される。隣のカップルが少し大きめの声で会話を始めたら、ちょっとこわくなって、さらに遠くにいく。
当然だけど、こんなことは、これまでにはなかった。
映像作品が多いから、ヘッドフォンを使うことも多い。
だけど、耳にあたる部分は、使うごとに変えられるように、紙のカバーがされている。そして、そうしたことがわずらわしいせいか、ヘッドフォンそのものを使わない観客も少なくない。
映像の作品の中には、プライバシーの関係もあって、撮影不可の作品のあるせいか、スタッフの動きが多く、時々、気がつかないうちに、そばを通り過ぎていて、それが、今は距離を保とうという気持ちがあるので、薄暗い中だと、ちょっと怖い。
飯山由貴の映像作品は、精神病院・精神疾患をテーマにしていて、人を中心にして表現されているせいか、とても近い感じがして、しばらく見ていた。
ローザ・バルバ。「地球に身を傾ける」。放射性廃棄物貯蔵管理施設を上空から撮影した映像で、その色合いや広がりや、放射性廃棄物の貯蔵管理、というような言葉のせいか、とても不思議で地球上のものとは思えないが、同時に、きれいだった。
靴を脱いで歩ける作品があって、それは、足の感触が変化して楽しいのだけど、そこを使う前には、必ず、手指の消毒を促される。映像作品の前には、イスが並んでいて、それはいつもの光景だけど、ソーシャルディスンスを保つために、一つ一つがたっぷりとスペースをとっているから、座れる人は少なくなっているけれど、座れると、ゆったりして快適だったりもする。
一通り展示を見て、ミュージアムショップに行った。
今回の図録は、まだいろいろと未定だったから、買えなかった。
トートバッグがあった。もうすぐ終了とはいえ、まだ会期中なのに、1500円が半額の750円になっていた。クリアファイルは、30%引きで275円になっていたので、2つとも買った。
最初の展示会場、横浜美術館を出て、次の会場、プロット48へ向かった。
歩いて、微妙な小雨の中を約10分。
工事中の場所などを脇に見ながらで、ちょっと新鮮だった。
横浜トリエンナーレは、2001年に始まって、それから、毎回きているのだけど、このルートは初めて通ったかもしれない。
プロット48についた。
入り口で、検温があって、ここでは、感染予防の取り組みが増えていた。
入館時の検温。
マスクの着用
人と間隔を確保
手洗い・消毒
密集回避
スタッフの感染予防対策
さっきの横浜美術館より、項目が増えていた。
間隔の確保と、密集の回避は、一緒ではないか、とちょっと思った。
この会場は、初めてきたけれど、ちょっと古いような感じもあって、それが味わいにもなっている。
今日は、横浜美術館も、ここも、若い女性が多い印象があったし、会期終了間際のせいか、平日の昼間なのに、そのわりには、人が多かった。今の展覧会は、一部をのぞいて撮影可が多いので、ほぼ全員がスマホで撮影をしている。
コロナ禍で、そんなにあちこちに以前よりは行けなくなっていて、こうした美術の作品は、いろいろなバリエーションもあるし、ビジュアル的にも目を引くものも多いから、トリエンナーレは、撮影場所としても優れているから、それで人が来ているのかもしれないとも思った。
パフォーマンスもあったけれど、予約制で、次は午後5時になってしまうので、その頃になると、帰りの通勤ラッシュになってしまい、その前には帰りたかったので、あきらめた。定員が18名になっていて、その会場の広さをチラッと見たけれど、おそらくはコロナ感染予防のために、密集回避のために、かなり人数を抑えたのだろうと思った。
そういえば、事前予約が必要な作品があり、私は気がつかずに、横浜美術館でも見られなかったし、このプロット48でも、すでに最終日まで予約でいっぱいだと知った。ラジオで、コロナ禍の今の時代のことを考えた、観客にカサをささせて距離を自然に保たせるような作品があると聞いて、ちょっと楽しみだったのだけど、それが、もしかしたら事前予約が必要だったのかもしれないと思った。
だけど、事前予約が必要なのは、おそらくは密集を避けるためであり、こうしたことを、観客からは見えないところで、安全を確保するために決めた方法だと思った。
コロナ感染拡大の世界の中で、最も早く開催した美術展ということなので、モデルにする場所もなく、考えたら、大変だったのではないか、とも思うし、この開催を可能にするまでの様々な交渉、トラブル、工夫、いろいろな出来事をきちんと残したり、できたら、それも含めて作品化したものも見たいと思った。
このプロット48も、映像作品が多く、全部見るとすれば、とんでもない時間がかかるから、こうしたトリエンナーレは、2日くらいかけて、ゆっくり見られたら、と思った。この施設の中には、3時間を超える映像作品(レヌ・サヴァント)もあり、その展示室のクッションはかなりゆったりとしていたものだった。
エレナ・ノックスの、エビとエロスにこだわった作品群は、性的表現がふくまれます、という注意書きはあったものの、そこに展開される雰囲気は、昔の「ビニール本」のような、トイレも使用しているせいもあって、本当に便所の落書きの、微妙に悲しい感じまで出ていた。
AFTERGLOW 光の破片をつかまえる。
そのテーマは広過ぎて、あいまいで、全体にバラバラな感じはしたものの、それでも、久しぶりにトリエンナーレを、このコロナ禍の状況で見られたことは、やはりうれしさもあった。
(2020年の時の記録です)。