アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「ファブリス・イベール たねを育てる展」。2008.4.26~8.31。ワタリウム美術館。

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「ファブリス・イベール たねを育てる展」。2008.4.26~8.31。ワタリウム美術館

 

2008年5月5日。

 

 当日は、曇り、少し雨が降る程度の微妙な天気。 

 でも、出かけられる事自体が嬉しかった。

 義母にデイサービスに行ってもらい、帰りはバスにしてもらうと、いつもよりも遅くなるから、少し余裕が出来る。

 外苑前で降りて、妻がおなかが空いたというので、最初に検索して調べた「オニイ」という店へ行く。人の気配が薄いくらいに空いていた。おにぎりを2個ずつ買って、みそ汁をつけて、お茶もついて、1人、800円弱。2階へ上がると、あと一人しか客がいなかった。

 ゆったり食べられた。

 

 外苑前は、ウソみたいに人が少なく、道に行く途中に「アートで街をやさい畑にするプロジェクト」の地図を見ながら、その場所を通るが、考えたら、4月26日に展覧会が始まって、その時に植えたとしたら、ほとんど双葉じゃないか、などと思う。と思ったら、最初のポイントにはあるかないか分からなかったが、次のスターバックス前の歩道には、竹のドームの十字形が出来ていて、その下に双葉があった。こういう事がなければ、ただの雑草としか思えなかったはず、などと思う。様々な野菜。ししとう。しゅんぎく。ピーマン。だいこん。にんじん。ゴーヤ。キュウリ。まだ、ほとんど何か分からないけど、これかも…などと言いながら、見ていると、妻のテンションは上がり、私も少し嬉しくなる。

 

 ワタリウム美術館の企画で、始まって、わりとすぐに行くのは初めてかもしれなかった。

 入場券を買って、受付で、2階から3階、そして4階の順番で回ってください。と言われた。

 2階までエレベーターで上がる。

 ドローイングが壁にたくさんある。微妙な絵。色の塗り方などを見ていると、教育を受けた感じはするけれど、全体的に無条件にすごくいい、というのでもない。野菜や果物で出来た人物が立っていて、すでにバナナが微妙に悪くなっていく時のにおいがけっこう強く漂っていた。これ、まさか、ずっと変えない、っていう事はないよね。みたいな話を妻とする。見たいような、見たくないような。

 

 友達をゴムか何かでかたどって、抜けガラのようになったものがぶら下がっている。(考えたら、これ、見て面白いけど、唐突なような気はした)。

 ドローイングは、植物に関するプロジェクトの案のような絵が多い気がした。理性的な人なのかもしれない、という気もして、だから、私にとっては、無条件に、すごくいい、と思い切れないだけなのかもしれない、というような印象だった。

 

 そして、3階までは階段で登った。ここはほぼ外階段だから、クルマの通る音などがひっきりなしに聞こえてきて、都会なんだ、と思ったけど、そういうのがけっこう面白い、などと勝手に思った。

 

 3階に入ったら、なつかしいような、ムッとするようなにおいがした。

 細長いようなスペースが、全部、草が植えてあって、かなり伸びていて、そこが草っぱらになっていた。人工的な風を起こしていて、そよ風、といった題名がついていた。蒸し暑い。これだけ作っていくのは大変だろうけど、楽しそうな気がした。テンションが上がった。

 

 4階に行く。

 作者がしゃべっている姿がプロジェクターで映し出されている。若々しさと楽天性を感じる。そして、4階にはハエがいるアクリルらしきボックスと、ミミズがいるという土があった。まだ細いミミズだった。

 そして、8000匹のハチがいるというハチの巣箱があった。透明なアクリル(?)らしき細長い箱が主体でそこを透明なボックスや、窓まで透明な(透明ばっかり)パイプでつないであって、外まで達していた。

 ホントに巣箱と一緒だ。

 みたいな事を思った。

 

 ハチがどんどん行ったり来たりしていて、細くて狭くて、という場所にぎっしりといるけど、養蜂家が協力していて、この場所で巣が出来ていくのが見られるっていうのは不思議だった。絶え間なく、動いているハチを見ていると、けっこう時間がたち、細長いパイプ(3メートルくらいはあるかも)を通って、なんだか混乱しながら行ったり来たりして、でも窓の外へ飛んでいって、窓に黄色の紙がはってあって(これは目印かもしれない)飛び立っていくハチと帰っていくハチが、ここは4階だから、かなり高い場所のはずなのに、飛んでいって、帰ってくる、いるという事がなんだかすごいと思った。

 

 考えたら、ハチは、ハエやミミズがいるから、植物が育って実をつける事が出来るはずで、ハチとかいない時は受粉などはどうしていたんだろう?みたいな事まで考えが、未熟で素朴すぎるかもしれないけれど、そこまでは走っていけた。

 

 ホントにいろいろな生き物がからんでいて、と改めて思うのは実際に目の前で見たからのはずで、このハチが一番、印象に残ったのかもしれない。

 

 再び、3階へ行き、草のにおいだか土のにおいだか、もう分からないけれど、確かになつかしさの感じられるにおいをかぎ、また2階へ戻ると、こういうプロジェクトを実現するためのドローイングであるんだ、と改めて思い、さっきの印象とはちょっと違ってきた。

 

 外へ出て、道を歩いて、野菜プロジェクトの空き地のところへ行った。たぶん、そこが今回のこのプロジェクトの中では一番大規模な畑で、そこにはワラで作ってあるテディベアもいた。これがカカシ代わりという事らしいが、そこへカラスもやってきた。

 

 時間がたつほど、行ってよかった、という記憶だけが残っていくように思えた。 

 野菜が育つ頃に、また行きたい、という気持ちには確かになる。

 

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.watarium.co.jp