アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「トーキョーワンダーウォール2008 伊藤雅恵」。2008.7.24。東京都庁。

 2008年7月24日。

 伊藤雅恵は、2年くらい前に、武蔵野美大の学園祭の時にアトリエで絵を見て、その次の年には文化村のギャラリーで個展をやり、今年は上野のVOCA展の佳作をとり、出世していく人って、あっという間なんだな、という気がしていた。

 

 その一方で、これからいろいろな事を言われて、大変なのではないだろうか、という気も勝手にしていた。ああいう風な絵をお願いしますよ。と、言われそうな感じがしたせいだった。

 

 個展の時に住所と名前を書いたので、毎回、展覧会のハガキを送ってくれる。ただの観客でコレクターの可能性もないので、後ろめたさがずっとあった。さらには、銀座の画廊で個展をやった時には、見にいった時に本人がたまたまいて、親切に話をしてくれたので、勝手に恩義に感じていた。

 

 まだ、2、3回しか乗ったことのない大江戸線に代々木で乗った。2つ目の都庁前で降りた。警備員がけっこういる。ワンダーウォールというし、これからの若手を紹介するのだし、文化局みたいなところが主催しているのだから、すぐ分かるところに、バーンと絵が並んでいるのかと思ったら、どのエレベーターに乗ったらいいかも分からなかった。

 

 そして、ハガキを見たら、E/Fエレベーターをお使いください、と書いてあって、エレベーターに乗って、3階で降りて、曲がって、人がほとんど通らなそうな連絡通路に行ったら、そこに絵があった。

 

 なんだか、あまっているスペースを、あまり業務に支障がないところで、という声が聞こえてきそうな場所だった。もっと本気だったら、興味がない人でも見られるような、1階か、展望台にすべきではないか、と思った。

 

 伊藤雅恵の作品があった。

 文化村で見た時に、勘違いかもしれないが、誰かの要求に過剰に応えている気配があって、どうなるんだろう?と思っていて、でも、翌年、銀座で見た時は、完全に吹っ切れていて、すごいと思った。そうしたら、賞までとった。

 

 だけど、今年の絵は、生意気な見方なのだけど、賞をとった、その絵をなぞっているような感じがしてしまった。とても小さくなっているような気がしてしまった。

 去年の絵は、ごちゃごちゃしているけれど、エネルギーは感じた。

 何か伸び悩み、みたいなものはあるのかもしれない、というか、20代前半で評価される、というのは、ものすごく周りの人間に何かを言われやすいという意味でも、今くらいが、とっても大変なのかもしれない、と勝手な事を思っていた。

 

 私は、ムサ美のギャラリーで見た、ファイルにあった、トイレの溜まっている水の中に星を見た絵が、いいなー、と思い、こういう絵を描ける人はすごいな、と思い、こういう感覚を失わずに、そして、もっと成長したのを見たいな、と観客としての勝手な感想を思い、だから、これからどうなるんだろう、と気になっていた。

 

 

「トーキョーワンダーウォール2008」の会場にも、VOCA展のカタログが置いてあって、そこに名古屋覚という美術評論家が伊藤雅恵のページで書いていた。

 

 長所は、明るくて華やかなこと。

 短所は、悪くいえば「お花畑」で、すごみがないところ。

 でも、そういう意味で「VOCA展絵画」だとも思ったので推薦した、という書き方までしていた。

 

「お花畑」だけだと、これからパターン化しすぎると、若いのに老けた作品にならないのだろうか、と勝手な不安要素を思った。

 でも、便器の中に星を見ることが出来た人なんだから、その方向へも、もっと突き抜けてほしい、と勝手な観客としては、今も思っている。

 

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

 

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