2011年10月20日。
考えたら、もう10年くらい前のことになるが、愛知県の豊田市美術館で、少女が横たわった姿が微妙にぼんやり(ぼんやり、っていう言い方はたぶん違うと思うが)描かれている絵が、光が入ってくる展示室に何枚かあったのを見て、妻がとても好きだ、と言って以来、個展があったりすると、なるべくマメに見るようにしてきた。そして、大規模な個展は、国内で初めてらしく、妻は前から楽しみにしていて、展覧会は夏からやっていたが、終わり間際の今日にやっと行けた。
美術館に入ると、展示をきちんと考えている、と思えるような空間が作られていて、最初の部屋から照明が落としてあって、暗めになっているのが、作品に合っていると思えた。まずは頭が台に横になっているブランクーシのような立体があったが、もっと柔らかそうで、もっと生きているようで、そこにいる感じと、重みがあって、妻はかわいい、という言い方をするようなものだった。
次の部屋が、最新作で、風水画と名付けられたシリーズで、地味ぎりぎり、みたいな絵が並んでいて、だけど、見ていると、確実に気持ちが落ち着いていくような感じで、それでいて、色づけもかなり極限に薄くなっていて、不思議なラインをきっちりと守っているように思えた。
それから、人物像の立体が横たわっていたり、中が空洞で、それで、手が両目にめりこんでいるのは、気持ちが分かる、と妻が言っていて、私も、リアルさを感じて、いいと思いながらも、分かるに行かないのは、少女の経験がないと本当には分からないもかもしれない、と思う気配は確かにあった。
展示は、だんだんと古い作品になっていく、という構成で、途中で、初めて見たかもしれない、と思えた「出現」というコーナーもあり、そして、キャプションもなく、最後の部屋まで行って、また戻って見た。
途中で、テーブルに何か果実らしきものが乗っている絵がすごくよかった。他には、少女が横たわる作品と、違う世界な感じがしたものの、人物が、座っていたり、立っていたり、という姿は素直に好きだと思えたりもした。自分の中の、あいまいで、微妙なところを作品にし続ける、考えたら、とんでもない意志の強さと粘りがなければ出来ないことを続けていて、やっぱりすごいと思った。
館内にあったクイーンズアリスのレストランは、今年になって、閉めていた。また、何か出来ると、ありがたいと、思った。
(2011年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。