1999年10月。
初台のオペラシティに、アートギャラリーも新しくできて、その開館記念としての展覧会だった。
ただ、感覚は解放されなかった。
オペラシティビルは、まだ出来たばかりなのに、にぎわった感じがしない。オペラシティーギャラリーも新しく出来たばかりなのに、落ち着いている。
なんでだろう。
CDが敷き詰めてあって、その上を歩いても、音楽は聞こえてこない。鉄と塩の村岡三郎も竹橋で見た時の方が、はるかに生々しかった。にぎると硬いものがあるという半透明な風船も、それを分っていてさわると、こんなもんか、と勝手な感想しか出てこない。
感覚を刺激するような様々なものが、今は確かにある。そうした「商品」があふれている中で、それでも「作品」として意味があるものを作るのは、とても難しいのでは、と思う。
それでも、少し経ってから思うのは、自分自身の気持ちに全く余裕がなかっために「感覚の解放」ができなかったのではないか。作品や展覧会だけでなく、当然だけど、観客として受け入れるような体勢がなかったのもしれない、と思うようになった。
オペラシティがにぎわっていないように見えたのも、ギャラリーが落ち着いて感じたのも、自分の問題なのかもしれない。
(1999年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。