アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「瀬戸内 直島旅行」②。2016.6.7~6.9。1日目。ベネッセハウスミュージアム。

f:id:artaudience:20210326110210j:plain

「瀬戸内 直島旅行」②。2016.6.7~6.9。1日目。ベネッセハウスミュージアム

2016年6月7日。

 夕方になって、ホテルに着いた。初めて来たのだけど、これまで写真を数限りなく見て来たから少し分かったような気になっていた。それでも、実際にチェックインをすると、そのこじんまりとした受付や、カフェで飲んだオレンジジュースや、自分たちにとっては分不相応ともいえる部屋から見える海や、やっぱり違っている。

 

 何より、鳥の声がいつも自宅付近で聞いているよりも、少し高めで澄んだ音に聞こえたし、静かだった。街ではなく、島だからなのだろうけど、少しずつ違う場所に来たということが体にも染みてくるような気持ちにもなっていて、ホテルについて、妻は昼寝をするかと思ったら、ホテル内のミュージアムを見たいというので、着替えて、荷物を少し開いて、部屋を出た。

 

 ほぼすぐに作品がある。須田悦弘の雑草が壁にある。写真で何度も見ていたけど、今目の前の空間にある、というのが、なんだかうれしい。歩きながらも、そこにあるのが見える。2階に部屋をとったから、手渡された入場券がわりのリーフレットを見ながら、安藤忠雄のドローイングとか、さっきカフェの外に見た大竹伸朗のボートの作品をすぐそばで見て、裏から見て、こんな風なんだ、と思って、見て、静かな中で見ることができるのが、とてもぜいたくな気持ちにもなる。森村の作品を探したら、瀬戸内国際芸術祭の時のみ、を知り、ちょっとガッカリする。

 

 受付にキースへリング、そのそばにジャコメッティ。歩いて行くと、大竹伸朗の日本景の作品があって、ネオンの色がきれいだったり、と思って、さらには、何度も写真で見たバンザイコーナーも初めて見て、思ったよりも小さい印象もあったけど、鏡を使って、日の丸に見えて、この階には、イブ・クラインやジャスパージョーンズや、サム・フランシスや、思っていた以上のバリエーションがあって、広さも思ったよりもあって、部屋の大小もあって、気持ちが豊かになるのがわかって、リチャード・ロングの流木を使った作品、壁にもあるペインティング、さらには屋外にもリチャード・ロングの作品があって、よく見るとクモの巣がはってあったりして、鳥の声が聞こえる。

 

 それから、円を描くようなスロープを下って、あちこちを見ながら、ジョナサン・ボロフスキーの3体の人形が気になり、それがしゃべっているのが耳に入ってくる。フランク・ステラの大きめの立体が壁に2点ある。バスキア大竹伸朗国吉康雄の作品、森村の三島由紀夫まである。柳幸典の国旗の作品は、あとでスタッフに尋ねたら、真ん中にある崩れた国旗のように見えるところは最初は空白だったのが、アリがあちこちから砂で作った国旗から材料を集めてきたものだと知って、また見る目が変わった。

 

 外には杉本博司の海景が並んでいる。瀬戸内海の水平線と合わせている感じも含めて、改めてすごいと思ったし、外へ設置することで劣化も作品に含めていくという事を知り、また恐いような気になった。鳥の声と、波の音だけが聞こえる。地下2階にはブルース・ナウマンのおおがかりなネオンを使った作品が、点滅をくり返している。

 地下1階の半分外には、安田侃の作品があって、すべらかな石に横たわると、空が見えて、ジェームス・タレルみたいと思った。

 

 夜に食事をゆっくりとして、午後9時半くらいなのに、宿泊客なので、見て回れた。ボロフスキーの作品の声は止まっていた。安田の作品に横たわると、夜空が見えて、星は一つだけ見えた。

 すごく豊かな気持ちになれた。

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.amazon.co.jp