アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

大竹伸朗「時憶」。2016.5.14~6.30。Take Ninagawa(麻布十番)。

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大竹伸朗「時憶」。2016.5.14~6.30。Take Ninagawa(麻布十番)。

 

2016年6月29日。

 電車を乗り継いで、麻布十番に来る。いつも夕方のような、どこかよく分らないような、微妙な場所。左側に六本木ヒルズのビルが見え、右側には思ったよりも東京タワーが大きく見える。住宅街のような、商店街のような、時間帯がはっきりしないような、広さも微妙な道を歩いて行くと、急にギャラリーがあった。ホントに一間のリビングな感じ。奥には、スタッフが黙々と働いていて、一般の客にはまったく目もくれない気配で、だけど、緊張感だけは伝わってくるように思える。

 

 大竹伸朗の作品は、いつもの、という感じもありながら、そして、ゴミを貼付けて、固めて、というような「作風」だけど、何だか静かな印象が今までと違う気がした。こうした方法が完全に体になじみ始めて、そうしたことを思うのかもしれなかった。網膜シリーズを小さくしたような、だけど、伝わってくるものに、けれんみが少なく、こういう風に伝える必然性みたいな自然さがあって、きれいに見えた。テープをはりつけただけに見える作品は、要素がすごく少なくなっているのに、豊かで端正なイメージが伝わってきて、気持ちが整うような印象があり、もっとざわざわさせるような事が多かったのに、でも、これが最新作に近いのだから、今は、こういう作品を作り続けているのだろうと思った。

 

 しばらく眺めるように見て、見つめるように見て、それから音がほとんどしないギャラリーから出た。道路の向こうに不思議なラブホテルがあった。大通りからも距離があって、微妙な立地で、誰が使うのだろう、と思うようなたたずまいだった。

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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