アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

若木くるみ個展「アウトでがんす」。2018.6.7~6.24。MORITAKA art gallery 。

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若木くるみ個展「アウトでがんす」。2018.6.7~6.24。MORITAKA art gallery 。

 

2018年6月10日。

 

 テレビでアーティスト本人が出演しているのを見た。後頭部の髪をそりあげ、そこに似顔絵を描くという作品を作る人で、最初に知ったのは「岡本太郎賞」を受賞した、という事実で、その時は、遠くから眺めている、というような気持ちで、一発屋というか、体を張ったパフォーマンスのタイプではないかと思っていた。

 

 ただ、テレビで話しているアーティストは、思った以上に、外へ出たがらないタイプだと思ったし、ウルトラマラソンやトレイルランといった普通以上に過酷な競技に出場している、といったことも知った。それは、どこか自分の感覚がおざなりになってしまっているというか、無痛症とは違うが、苦痛に鈍感すぎる部分があって、それで、知らず知らずにうちに自分を痛めつけていたりしないだろうか、といった恐さがあって、それも含めて作品展があるというので、ちょうど用事があったので、雨の中を秋葉原の人混みを抜けて、3331へ向った。どんどん人が少なくなる。

 

 2階のギャラリー。入ると、あいさつをされた。そこにいた男性が、ギャラリーにいつもいるようなタイプではなくて、ちょっと意外に思えた。

 

 ギャラリーには、淡々とした薄味に見えて、味わいがある、美しいといってよくて、日常的とは微妙にずれている風景画のような木版画が並んでいて、その床に、元の版木がやっぱり並んでいる。こういう作品も作るんだ、という気持ち。

 

 その横に小さな切片が張られていて、老眼鏡をかけたら、「悪口」だった。5月10日に「アウト・デラックス」に出た。それは私も見たのだけど、そのあとに、エゴサーチをしたら、ブス、とか、出ちゃいけない人とか、キチガイ、みたいな悪口をたくさん発見したらしい。それで落ち込んだらしいが、(確かにその1部だけが並べてあったが、それだけでも100を超えていたと思う。自分で探したとはいえ、これだけ悪口を書き込むエネルギー自体も恐い)これも含めて作品にしようと思ったら、大事なものに思えて来た、といった文章があったが、そうでも思わないと、こういう負のエネルギーは本当に呪いといってもいいもので、だとしたら、その呪いが実現した場合は、呪った側にも報いがいくことが、冷静に証明されれば、こういうことは減るのかもしれない、などとも思った。

 

 さらに顔拓が並んでいた。この作品は実際にご本人が目の前で作品を制作したりすることで、初めてその凄さみたいなものが分かるのではないかと思ったりもした。それから、小さいテレビのおもちゃみたいなものをのぞいて、ボタンを押すと、画面が変わる作品は売っていたら、ほしいと思えるようなものだったが、たぶんかなりの金額になるだろうから、と思うと、無理かもとも思った。

 

 他力本願、という言葉があるDMの通り、テレビに出ることでの話題というような狙いもあったのだろうけど、そのネガティブな反応みたいなものが、かなり印象に残って、今の時代は衆人環視みたいな気持ちになりやすいのかもしれない。

 

 そして、後頭部へ顔を描くことも他のランナーに向けて描き始めた、というのもDMで知った。あ、そういえば、後頭部に描くということは自分が先に走っている、という前提では、とも思う。それも200キロを超えるマラソンで日本人女性では1位とか、世界で9位とか、すごい実績だったけど、自分の苦痛に鈍くなっていないのだろうか、とちょっと心配になったりもする。

 

 木版画の作品も、テレビに出たのを利用して、見せようとしたのかもしれないが、改めて見ても、不思議な質感はあった。

 

 

(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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