アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime」。2019.6.12~9.12。国立新美術館。

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「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime」。2019.6.12~9.12。
国立新美術館

 

2019年8月24日。

 小説家の話を聞いてから、夕方になってから美術館に着いた。最寄りの駅からは、やけに人が少ないと思ったのだけど、中に入ったら、意外と若いカップルが多くて、人がいた。ややぼやけた人の顔の写真が並ぶ。ボルタンスキーは、ずっと同じテーマ、たとえば、殺された人だけでなく、人は死んでいくから、その記録としての写真、というか、会場はすべて薄暗くて、服が壁一面をうめつくしていたり、服で山ができていたり、それに、裸電球が照明として使われているだけで、どこかドラマチックだし、高い天井から、大きい写真がプリントされた布が天井をうめつくすようにあったりするだけで、何かしら感情が揺さぶられるのはわかる。

 

 さらには展示によっては、天井から長いひもでつるされた電球が揺れるようになっていて、それも、劇的な効果が増していて、これだけの工夫で最大限に見え方が変わってきて、影絵も、小さい仕掛けで、大きな部屋もなんとかなっている。

 

 そういったインスタレーションの工夫みたいなところが、やたらと気になったのは、渡された新聞のような解説は、かなり素っ気ないもので、だけど、展示室を移動するたびに、やはり、何か、もっと理解が深まるのではないか、などと思って、その紙面を読もうとするのだけど、全体が暗いから、おそらくすべてがシリアスな意味合いが強い展示物を照らす電球の下で読もうとするのだけど、そうすると、人がいた気配だけが残っているような展示のそばで、今、生きている人間が、その電球で紙面を読むと、そこが1セットみたいになり、急速に暖かくなってしまうというか、生きている人間の存在の強さみたいなものが際立ったりするのだけど、もし、誰もいないような中で見たら、もっと人の生き死にみたいなものを強く感じ、どこか悼む気持ちが強くなったのだろうか、などと思う。

 

 壁の上の方に、青いライトで囲まれたコートがかっこよくて、それをモチーフにしたクリアファイルは買ってしまった。

 

 

(2019年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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