1999年2月23日。
大物らしいが、失礼ながら、まったく知らない人だった。それに活動期間から考えても、過去の自分の遺産でやっている人だと思っていた。
でも、軽みがあった。椹木野衣が後に評価しているのを知るが、確かにコンピュータの部品を置いた風景写真はよかった。これからの人のように見えた。とても今のものだった。
「どんなことでも、私に引き寄せないと、写真は撮れない」。
そんな言葉に実感がある。
写真館を出てから、恵比須の駅で実家に電話をする。寒い日だった。母は話の途中で急に泣き出し、その後すぐに何ごともないように普通に話をつなげた。それに自分で気がついていないようだった。
あせった。でも、あと2日で行くから、と言った。
寒かった。
「ケイゾク」というドラマのエッジのきいた感じが気持ちよかった。でも、それどことではない日まで、もう3日もなかった。ひたすら、灰色の景色だった。
(1999年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。